2016 年 19 巻 3 号 p. 24-32
目的:熟練保健師の実践から思考を含む具体的な地区活動展開プロセスを明らかにする.
方法:方法は質的帰納的記述研究,対象は熟練保健師10人である.半構成的面接でデータを収集しM-GTAで分析した.
結果:対象は,保健師経験年数を10年以上有し豊富な地区活動を経験していた.また,38の概念と13のサブカテゴリー,2つのカテゴリー『本気の高まり』『本気が住民の主体性を育む』,1つのコア概念【何とかしたい】を抽出した.
考察:熟練保健師の地区活動展開プロセスは,『本気の高まり』から『本気が住民の主体性を育む』であり,その中心に存在するコア概念【何とかしたい】が地区活動を展開する駆動力になっていた.どうにかして地域をよりよくしたいという本気は,目の前の現象を自己に問うことで発現されていた.【何とかしたい】は,歴史的功績がある保健師の個々の記録にも記述されていたが,本研究にて実証的に明らかにされた.地区活動に関する代表的な理論やモデルには,『本気の高まり』は表されていないが,『本気が住民の主体性を育む』プロセスは,住民主体の行動を引き出し,地域に根づかせる準備をするPDCAサイクルであった.
結論:実践的地区活動展開プロセスは,【何とかしたい】をコア概念として,本研究で実証的に導出された.【何とかしたい】は,目の前の現象を自己に問う自己内対話で発現されるものであった.また,住民主体の行動を引き出すPDCAサイクルにつながっていた.