日本地域看護学会誌
Online ISSN : 2432-0803
Print ISSN : 1346-9657
研究報告
「親なき後」に向けた知的障がい者の生活場所を決断する渦中にある高齢期の母親の思い
佐々木 理恵大河内 彩子田髙 悦子有本 梓伊藤 絵梨子白谷 佳恵臺 有桂
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2016 年 19 巻 3 号 p. 41-49

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抄録

目的:本研究の目的は,知的障がい者の将来の生活場所を決断する渦中にある母親の思いを明らかにし,知的障がいをもつ子どもの自立や,親のQOL向上への支援の示唆を得ることである.

方法:方法は質的帰納的研究であり,対象者は親の会に所属する65歳以上74歳以下の母親6人である.

結果:全対象とも【親・子離れの必要性】【親子の精神的なつながり】【施設入所への不安】【きょうだいへの罪悪感】【生活管理への不安】【仲間の存在の安心感】を感じていた.入所を継続させたい母親(第1群)に特徴的な思いとして【親も子どもも自立に向かうことへの安心感】【施設との関係に対する不満】があり,短期入所し将来は完全入所させたい母親(第2群)では【短期入所への抵抗感の低下】【完全入所後への不安】,将来の生活場所を迷っている母親(第3群)では【入所への抵抗感の高さ】,将来はきょうだいに託したい母親(第4群)では【親,子どもの安心感】【きょうだいに託す見通しのなさ】があった.

考察:全対象に対して精神的なつながりを尊重した支援と高齢化や重度化に対応した地域資源の充実化,第1群に対して施設への不満軽減と親子関係の再構築促進への定期的な話し合いや情報開示への支援,第2群に対して短期入所の利用継続や完全入所への不安軽減,第3群に対して施設利用者と検討中の親の情報交換,第4群に対して母親の思いの揺れを理解しきょうだいを見守る支援,が必要であると示唆された.

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© 2016 一般社団法人 日本地域看護学会
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