日本地域看護学会誌
Online ISSN : 2432-0803
Print ISSN : 1346-9657
研究報告
自治体の産後ケア事業(デイケア型)を利用した母親の利用前後の気持ちの変化
―効果的な産後ケア事業の展開へ向けた事業評価の視点より―
畠山 典子原田 静香中山 久子櫻井 しのぶ
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2019 年 22 巻 1 号 p. 13-25

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抄録

目的:自治体における産後ケア事業を利用する母親はどのような気持ちにおかれているのか,産後ケア利用後にどのような気持ちの変化をもたらしたのかを明らかにすることで効果的な産後ケア事業の展開方法への示唆を得ることを目的とした.

方法:産後ケア事業を利用した母親については利用前・利用後の気持ちの変化について,直接的ケアを提供する助産師については,ケアのなかでとらえた母親の気持ちについてインタビューを行い,グラウンデッド・セオリー・アプローチに準じて質的帰納的に分析した.

結果:産後ケア事業を利用した母親の利用前の気持ちについて,【漠然とした不安感を軽減したい】【自分自身を振り返るための気持ちのゆとりと空間がほしい】【初めてのことに直面する機会が多く,否定的な感情をもちやすい】【どんな自分でもまずは受け止めてほしい】【他の母親や理想の母親像と現実を比較してしまう】【早いうちから信頼して相談できる人やサービスについて知っておきたい】の6つのカテゴリーを抽出した.利用後は,【母親自身が大切にされた経験となる】【気持ちにゆとりが生まれ思考が前向きに転換する】【交流のきっかけとなる】【漠然としていた不安の内容が見えてくる】の4つのカテゴリーが抽出され,母親の気持ちのポジティブな変化がみられた.

結論:産後,母親としての新しい役割を担う時期には自信の低下や葛藤が起きやすい.その時期に,自分を受け止めてくれるという安心感や,専門職からのサポート,安全な環境のなかで自らを振り返り,大切にされた経験は,自分自身や児,家族,社会に対して前向きな気持ちの変化をもたらした.よって産後ケア事業のなかにおける個別性あるエモーショナルサポートを基盤としたケアの重要性が示唆された.

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© 2019 一般社団法人 日本地域看護学会
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