目的:保健師が新任期に感じた,地域で生活する統合失調症の母親に対する支援の困難とその対処を明らかにする.
方法:地域で生活する統合失調症の母親の個別支援活動経験のある中堅保健師3人に,半構造的面接を実施し,データを質的記述的に分析した.
結果:新任保健師が感じた地域で生活する統合失調症の母親に対する支援の困難として,【訪問前に抱いていた事例やその支援への否定的な感情や悩み】【経験のないなかでひとりで支援することへの自信のなさや不安】【統合失調症特有の症状に対する支援のむずかしさ】【母子共に生活するための支援を遂行するむずかしさ】の4カテゴリー,その対処として,【前向きな姿勢で事例と直接会い支援を積み上げていく】【事例と信頼関係をつくり,事例と児と共に歩む姿勢をとる】【疾患の管理と育児の両立を目標に個別的・具体的な支援を行う】【職場内の先輩・上司・同僚・他機関の職員の協力や支援を求める】【支援の予測や事例検討会などをとおして他機関と連携する】の5カテゴリーが抽出された.
考察:新任保健師は,支援時だけでなく支援開始前から困難を抱えており,疾患と育児の支援の両立に困難を感じていたことから,保健師自身が対処方法を模索するだけでなく,上司や同僚も新任保健師が抱える困難を把握し,フォロー体制を整える必要があると考えた.