2020 年 23 巻 3 号 p. 23-31
目的:在宅における特定行為とその導入に対する訪問看護師の認識を明らかにする.
方法:A県の訪問看護師8人に対して,半構成的インタビュー調査を実施し,データを質的帰納的に分析した.
結果:特定行為とその導入に対する訪問看護師の認識は,【特定行為への期待】として≪利用者・家族の負担軽減≫≪タイムリーな特定行為による回復効果の期待≫≪特定行為ができないことによるロス発生の抑止≫≪看護の質向上に貢献≫≪在宅医療体制充足に貢献≫≪医師の負担軽減≫が抽出された.【特定行為への懸念と抵抗感】として≪現状の医療体制で対応可能≫≪看護師の役割を超えた医行為拡大への懸念≫≪制度導入への疑問と抵抗≫≪本来の看護ケアの質低下への懸念≫≪地域医療体制の底上げが優先≫が抽出された.【特定行為運用の課題】では≪看護師の判断力・技術力の担保≫≪特定看護師の負担増大≫≪責任の所在と安全管理の課題≫≪主治医との連絡・意思疎通の課題≫が抽出された.
考察:訪問看護師は特定行為に対して,肯定的認識と否定的認識の両方をもっていた.そして,特定行為を実践し運用するには課題があると認識していた.この認識は制度に係る理解が十分進んでいないことやその地域の医療の状況に影響されると考えられる.特定行為の導入には,この制度の理解を深め,訪問看護師の特定行為に対する認識を統一させていく方策や課題への取組みが必要である.