2025 年 28 巻 1 号 p. 41-50
目的:郊外部の丘陵地に開発され半世紀を経過した戸建住宅団地の子どもの育ちを支える中高年居住者による互助活動とその思いを明らかにし,少子高齢化が急速に進む戸建住宅団地のまちづくりとしての互助活動への支援を検討する基礎資料とすることである.
方法:A市X団地に在住し,本研究に関心を示した50歳以上で子育て経験をもつ者にインタビューを行った.分析は,質的記述的方法を用いて行った.
結果:研究参加者は12人で,平均66.3歳であった.子どもの育ちを支える互助活動は【あいさつや見守りを重ねることで交流を深める】【子どもが安心して活動できる体制を整える】【培った技術や経験を子ども達に伝える】の3カテゴリーが生成された.互助活動への思いは【自治会や行政が適切に関わってほしい】【有志でかつての活動を再開したい】【団地の魅力を引き出すまちづくりを推進したい】等の6カテゴリーが生成された.
考察:子どもの育ちを支える互助活動は,中高年期の発達課題であるGenerativityに基づくものであり,その継続には子ども達のポジティブな反応と保護者からの激励が必要と考えられた.中高年者は現在の活動での絆を維持しつつ,団地内の知人やPTA仲間など過去の絆も再構築し,まちづくりを目指した互助活動の進展を願っていた.その実現には,近隣学校や行政との協働が望まれるが,行政は住民の潜在力を尊重し,住民との対話を重ねて支援を行い,まちづくりを推進する必要がある.