日本地域看護学会誌
Online ISSN : 2432-0803
Print ISSN : 1346-9657
地域高齢者の閉じこもりの状況とその背景要因の分析
鳩野 洋子田中 久恵古川 馨子増田 勝恵
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2001 年 3 巻 1 号 p. 26-31

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抄録

寝たきり予防の観点から注目されている,閉じこもりの状態の高齢者のケアを考えてゆく上での基礎資料とするため,ある町においで閉じこもりの出現割合および背景要因の分析を行った.調査方法は住民基本台帳から家族形態を勘案して抽出した65歳以上の高齢者544名に対する留め置き式のアンケート調査,および看護職による聞き取りと観察である.調査内容は,属性,健康状態,転倒経験,ライフスタイル,役割,家族や友人との関係性,QOL,環境条件であった.寝たきり,痴呆,医学的な外出の禁忌を指示されているものを除き,月数回以下しか外出していない高齢者を「閉じこもり群」とし,そうでない高齢者を「非閉じこもり群」と定義した.分析は,2群の背景要因についで比較するとともに,単変量解析にて10%未満で有意であった項目を説明変数としてロジスティック回帰分析を実施した.472名を解析した結果,本調査対象の中での閉じこもりの出現割合は6.6%であった.多変量解析の結果,有意であった項目は,居住地が海側か山側か,友人の有無,歩行障害の有無,生活の規則性であった.今後は自立ないしそれに近い状況でありながら,外出していない高齢者の将来の寝たきりの可能性を検討する必要性があることが考えられた.また閉じこもりのケアを考える上では高齢者の個別性とともに,環境条件に着目することが重要であることが示唆された.

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© 2001 一般社団法人 日本地域看護学会
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