抄録
本研究は,介護保険制度開始後の家族援助に関する行政保健婦・士と訪問看護婦・士の家族援助に関する役割認識と役割期待を明らかにすることを目的とする.研究方法は,K県M市の保健センターと市立訪問看護ステーションで同一事例に関わる保健婦・士と看護婦・士に対する面接調査から得られた35項目の家族援助内容について,自己の役割意識と相手に対する役割期待について5段階評価で回答を得る調査表を作成する.これをK県内の全市町村と訪問看護ステーションに各5枚ずつ送付し,上限を5人として回答を得る.また,その評価結果について両職種間で有意差検定を行った.調査結果では,合計129か所の施設から491人の回答を得た.保健婦・士の役割では,他職種との連携やインフォーマルサポートに関することなどが,看護婦・士では,療養者の病変時の対応や介護者との信頼関係の形成,精神的支援などが上位を占め,それらの保健婦・士と看護婦・士それぞれの役割認識と役割期待の高い項目は,ほぼ一致していた.しかし,看護婦・士の役割認識が保健婦・士の役割期待より有意に高く評価されていた項目が30項目であったのに比べ,保健婦・士の役割認識と期待の間で有意差があったのは4項目のみで,保健婦・士のほうが認識と期待の一致度が高いことが明らかになった.また,保健婦・士,訪問看護婦・士ともに自他の役割についての評価が35項目中,それぞれ29項目ずつに有意差があり,自他の役割をかなり区別していることが明らかになった.これらから,介護保険制度開始後では,互いに自他の役割を強く意識し,区別したものと捉えて有効な役割分担を指向していることが示唆された.