抄録
本研究は訪問看護職者の判断の特徴を明らかにし,訪問看護職者の教育方法について示唆を得る目的で行った.研究デザインは帰納的アプローチによる質的記述的研究である.対象はF県下の3か所の訪問看護ステーション訪問看護婦14名,方法は半構成的質問紙法によるインタビューである.面接内容は,「困った事例,うまくいった事例,気になっている事例」での家庭で看護ケアする際の看護者の判断である.19事例58判断場面の研究資料が得られ,各々の判断場面から判断内容と判断プロセスの2側面を帰納的に整理し,以下の結果が得られた.1.判断内容に4つの大カテゴリー【関わりの方針・ケアの方向性への判断】【看護者・体制への判断】【患者へのケア展開方法への判断】【家族へのケア展開方法への判断】が見られた.2.訪問看護職者の判断プロセスは様々な思考を使用し,多彩で複数の判断プロセスを経て看護活動にいたっていた.特に,「生活」を理解するための円環的判断プロセス,患者・家族の気持ちに添いながら判断する「循環型」判断プロセス,活用する資源が少ない中での「開発型」判断プロセスに特徴が見られた.3.以上の結果から,訪問看護者を対象とした系統的な継続した教育システムの導入と現場で実際に指導できるスーパーバイザーの育成が重要である.