抄録
目的:在宅ケアの効果を評価する方法を,ケア実践例を用いて明らかにした.調査5機関のアウトカム標準値(利用者の改善率と安定率)と各機関のアウトカム値を比較可能にするために,アウトカムに影響する利用者条件の調整方法を検討し,それに基づき各機関のアウトカム結果を明らかにした.方法:1999年9〜12月,5つの訪問看護ステーションにおいて,全数609事例中,アウトカムの測定が困難なターミナル事例を除き,40〜64歳の介護保険対象疾患患者と65歳以上全数で,2か月間継続してケアを行い,看護職により各事例について調査開始とケア2か月後の2時点の同一項目調査によりアウトカム測定ができた451事例を分析対象とした.アウトカム項目はPeter W. Shaughnessyらにより開発され,全米のMedicare対象者に義務づけられているOASIS(The Outcome Assessment Information Set)の簡易版15項目を検討し,これらの項目は日本訪問看護振興財団のアウトカム研究でも大部分が測定可能とされており,わが国に適用可能と判断して,これらの全項目を使用した.利用者背景については過去の研究からわが国で必要と考えた6項目について利用者条件調整の要否を分析した.結果:5機関の調査全事例のアウトカム値に有意な影響があることが確認された利用者背景条件は,自立度(障害老人の日常生活自立度,JABCの4段階)と痴呆度(痴呆性老人の日常生活自立度,痴呆なし〜Mの6段階)であった.この2項目は各機関の利用者アウトカム値(改善率と安定率)の調整が必要であることが明らかになった.アウトカムの標準値と各機関との比較は,各機関値を標本百分率,全機関値を母百分率とし,有意差のあったアウトカム項目に注目すべきとした.その注目すべきこととして,アウトカムが標準値より有意に高い項目が多かったA機関では,自立度で調整した場合は改善率では整容,洗身,移動,軽食の準備,痛み,尿失禁が高かった.痴呆度で調整した場合は,改善率では整容,洗身,移乗,軽食の準備,服薬が高かった.本研究から,全5機関のアウトカム標準値と,アウトカムに影響する利用者の条件を調整した各機関のアウトカム値を比較することによって,各機関のアウトカム値が客観化され,評価の精度を高めるといえる.本研究は以下のことに利用可能と考える.アウトカム評価の結果に基づいてケアの質を改善すべき内容を焦点化,ケアマネジャーによる利用者アウトカム管理,第三者評価,評価結果が公表されれば利用者のケア機関選択の情報となる.