抄録
年齢18〜69歳の女性369名を対象として,自己の体重を適正体重に維持しようとする態度について検討することを目的とした.体重制御態度を表す尺度として,現体重(A),本人が目標とする体重(B)および標準体重(C)をもとに次の3尺度を求めた.すなわち(1)痩せ願望か肥り願望か.現体重と目標体重との差(A-B)を求めた.この値が正の値は痩せ願望を,負の値は肥り願望を表している.(2)気構えの強さ:(A-B)/A×100で表した.(A-B)の値は,痩せ願望もしくは肥り願望を表しているが,何kg痩せたいかもしくは肥りたいかの絶対値は現体重によって左右されるので,体重の異なる集団間の気構えの強さを比較するために,現体重の影響を補正した値を用いた.この値のマイナスの大きい数値ほど肥りたいという気構えが強いこと,プラスの大きい数値ほど痩せたいという気構えが強いことを表している.(3)目標体重(B)の妥当性:(B-C)/A×100で表し,この値が0に近いほど目標値の妥当性は高いことになる.年齢を18〜24歳,30〜49歳および50〜69歳の3階級に分け検討した.その結果,いずれの年齢階級においても痩せ願望がみられた.また,体重を制御しようとする気構えの強さに有意な年齢階級間差は認められなかった.一方,目標体重の妥当性には有意な年齢階級間差が認められ,18〜24歳で低く,50〜69歳で高かった.体重を制御しようとする気構えの強さと肥満指標との間には有意な正の相関が認められ,痩せたい願望は肥っている人ほど強く,肥りたい願望は痩せている人ほど強かった.気構えの強さと最も強く関連する肥満指標は,肥満度であり,このことはすべての年齢階級に共通していた.また,年齢階級別相関係数の差を検討したところ,50〜69歳では,皮脂厚和と気構えの強さとの関連が若年層に比べて強かった.以上の結果から,本人が設定している目標体重の妥当性および体重制御の気構えを起こす刺激となり得る身体情報は年齢階級により異なることが推測され,適正体重維持に向けた保健指導における留意点が示唆された.