抄録
本研究では,セルフケア能力は学習によって獲得されるという立場から,セルフケア能力獲得過程を把握して学習援助に役立てることを目的に,糖尿病予防に関するセルフケア能力獲得過程モデルとセルフケア能力獲得過程の到達段階を把握する自記式質問紙を作成した.作成したセルフケア能力獲得過程段階評価のための質問紙を用い,セルフケア能力獲得過程を検討することを本稿の目的とした.本研究では,T市が基本健康診査の事後フォロー事業として保健婦が中心となって実施している糖尿病予防教室と,糖尿病予防教室修了者の継続的取り組みを目的に実施している継続教室を対象とした.調査は,糖尿病予防教室受講者8名の質問紙による自己評価調査と訪問調査,および継続教室受講者52名の自己評価調査を実施した.継続教室受講者52名のデータから,質問紙の内的整合性とモデルのパス解析を行い,また糖尿病予防教室受講者8名のデータからセルフケア能力の教室受講による変化を調べ,セルフケア能力獲得の過程を検討した.その結果,以下の結論を得た.1.セルフケア能力獲得過程段階評価のための質問紙全体のCronbach係数(α)は,0.86〜0.91で,内的整合性が保たれている.2.セルフケア能力獲得の各段階は,相互に関連をもち,【現状を認識する】→【判断する】→【決定する】→【実行する】→【継続する】という段階を踏んで進んでいく過程が示された.3.セルフケア能力は学習によって高められる.自分の健康にとって適切な食事,運動,休養に関する知識を獲得し,自分のからだの状態と生活の送り方の現状を的確に把握してその差を理解することにより,セルフケアの学習は発展する.今後,さらに対象数を増やし,質問紙の構成概念妥当性や基準関連妥当性について検討していく必要がある.