抄録
目的:訪問看護ステーション(以降,ステーション)における1週間の学生実習において,学生の理解度の高い実習内容を学習の機会の多少との関連で明確化することを本研究の目的とした.短期間に効果的に学べる内容と学内演習やその他の関連実習で補充すべき内容を明らかにし,より良い実習のための実習内容および目標設定に役立てる.方法:対象はF大学看護学科の学生48名と学生の実習指導を担当した6ステーションの看護婦33名であった.実習内容の学生の理解度について学生と看護婦の双方に自記式の調査票で調査を実施した.37調査項目は日本看護協会の「訪問看護評価基準」等に基づき,(1)アセスメント・計画・評価,(2)日常生活・療養生活のケア,(3)医療処置,(4)リハビリテーション,(5)感染処置と予防指導,(6)ターミナルケア,(7)精神的援助,(8)家族支援,(9)関係者との連携,(10)その他の内容で構成された,各37項目について学生の理解度を4段階で尋ね,その他の選択肢として,「関わらなかった」を含めた.実習内容はオリエンテーション,学生1人あたり12〜16件の同行訪問,担当するケースの看護計画立案,計画実施,カンファレンスが含まれた.結果:学生・看護婦ともに「よく理解した」と評価した割合が高かった内容は,訪問看護婦の「仕事の価値」「清潔ケア」「アセスメント」「計画立案」であった.また,学生・看護婦ともに「学習の機会が少ない」と回答し,かつ理解度が低かったと評価したのは,「経済支援」「医療機関連携」「その他連携」「感染症のケア」「緊急対応」「医療機器指導」であった.結論:学生の理解度が高かった実習内容は,短期間の訪問看護実習において必須とし,到達目標に設定するのが適切である.一方,学習の機会の機会の少なかった看護内容は講義・演習・その他の機会に補充して指導することが求められる.