抄録
在宅酸素療法(Home Oxygen Therapy:HOTと略)を新たに開始する者への訪問看護開始初期の看護の質を保証し,かつ効率的な看護を提供することを目的に,パス法に従って訪問看護内容・頻度を標準化した枠組みを開発した.本HOT用訪問看護標準化枠組みは,2か月間にわたり1週間から1か月の間隔で,計4回の訪問看護を提供するものである.これを用いることの効果をケースコントロール研究により,利用者への効果,ならびに費用対効果比の視点から評価した.20名の新規HOT利用者を各10名ずつ無作為にHOT用訪問看護標準化枠組みを用いて訪問看護を行うケース群と,従来どおりの訪問看護を行うロントロール群に分け,途中で入院した1名を除きケース群9名とコントロール群10名を分析した.HOT実施者への効果の評価は3つの側面から行い,14ケア項目に関するアウトカム到達度,および5項目の目標への到達度を評価した.さらに,各対象者への訪問回数,訪問滞在・連携・管理時間から成る業務時間から費用対効果比を評価した.その結果,次の知見が得られた.1.各ケア項目別の利用者アウトカムはHOT用訪問看護標準化枠組みを用いたケース群のほうがコントロール群に比べて高く,特に「疾病管理」「理学療法」「セルフケア」「排泄」「清潔」の項目においては有意差が認められた(p<0.05).2.目標到達度は,HOT用訪問看護標準化枠組みを用いたケース群において「安全に在宅酸素療法を実施できる」「日常生活が在宅酸素療法開始以前に戻る」の項目において高く,有意差が認められた(p<0.05).3.費用対効果比は,HOT用訪問看護標準化枠組みを用いたケース群のほうがコントロール群に比べて高い傾向にあり,その理由として全業務時間はケース群のほうが長かったが,アウトカムおよび目標到達度がケース群に有意に高いことがあげられた.以上から,本訪問看護標準化枠組みの有効性が示唆されたが,今後さらに対象者を増やして検討する必要がある.