日本地域看護学会誌
Online ISSN : 2432-0803
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中国における高齢者ケア体制の現状と課題
許 翠萍三上 洋伊藤 美樹子有馬 志津子
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2003 年 6 巻 1 号 p. 71-78

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抄録
目的:中国では人口の高齢化が急速に進んでいるが,高齢化社会を迎えるに当たって,高齢者ケアのための社会保障制度が不備な現状にある.こうした背景を踏まえて中国における高齢者の健康,介護,経済的な現状を分析し,今後の中国の高齢者ケア体制のあり方について検討することを目的とした.方法:中国衛生部より刊行された中国衛生年鑑,中国統計局より刊行された中国統計年鑑,中国衛生部が行った第二回衛生服務調査,全国人口全面調査公報,中華看護協会における資料および関係者の調査結果を用いて,高齢化の状況,高齢者の健康状況,経済的な状況,介護者の負担,在宅サービスおよび施設サービスの利用意向の文献的検討を行った.結果:中国における高齢者ケア体制の現状の特徴として以下の4点が明らかになった.(1)平均寿命の延長および「一人っ子政策」による出生率の低下による人口構造の高齢化,(2)経済発展が不十分なため社会保障制度が未整備のまま,急速な高齢化が始まった,(3)高齢化に伴う慢性疾患有病率の上昇と要援護高齢者の増加,(4)核家族化,家族の扶養意識の変化による子どもとの同居率の低下と一人暮らしおよび夫婦のみの高齢者世帯の増加による家族介護機能の低下である.このような現状に対応するため,今後の高齢者ケア体制のあり方として,(1)保健・医療・福祉が連携したシステムの構築,(2)在宅サービスの充実および施設介護の整備,(3)高齢者の健康づくりによる健康寿命の延伸,(4)地域における介護のためのマンパワーの早急な育成および能力強化などが考えられた.結論:中国は日本の保健・医療・福祉改革の経験を参考にしながら,中国の国情にあわせた社会保障制度の構築を通して高齢者ケア体制の整備を図る必要がある.
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© 2003 一般社団法人 日本地域看護学会
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