日本地域看護学会誌
Online ISSN : 2432-0803
Print ISSN : 1346-9657
産業看護職がかかえる活動上の困難の構造と関連要因
錦戸 典子京谷 美奈子
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2004 年 6 巻 2 号 p. 72-78

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抄録
本研究では,産業看護活動の質の向上のために,今後どのような支援が必要であるか明らかにすることを目的として,東京都に在勤の産業看護職250名を対象に活動上の困難に関する質問紙調査を実施した.130名からの回答を分析した結果,活動上の困難に関しては,「非常にある」が26.8%,「まあある」が57.5%,「あまりない」が13.4%,「まったくない」が2.4%であった.「非常にある」と「まあある」を合わせたものを「困難あり群」,「あまりない」と「まったくない」を合わせたものを「困難なし群」として,属性データや学習機会の有無との関連を調べ,単変量分析でp<0.10の関連がみられた変数を独立変数とし,困難の有無を従属変数としたロジスティック回帰分析を実施した.その結果,産業看護経験が短いこと,職場内学習機会がないこと,産業保健推進センターの研修受講機会があったことが,各々独立して困難があることに関連していた.困難の具体的内容に関する自由記述データを内容分析した結果,91名の回答から188のフレーズが得られ,32の小カテゴリー,16の中カテゴリー,6つのコアカテゴリーに整理された.主なコアカテゴリーは,活動スキル上の困難,職場での理解・支援・連携不足,学習機会・相談相手の不足,組織上の制約,活動範囲・質が不十分,などであった.今後,産業看護活動の質を高めていくためには,スキル向上のための継続教育の体系化やスーパーバイザーの育成とともに,他職種・事業場の理解を得るためのPR活動など,産業看護職が働きやすい環境を整えることが重要であることが示唆された.
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© 2004 一般社団法人 日本地域看護学会
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