抄録
目的:配偶者と死別した高齢女性の生活満足度に影響を与える要因を,死別経験による成長感やソーシャルサポートの受領などから明らかにする.方法:F県3市1町の60歳以上の女性351名に自記式の質問紙調査を実施した.内容は,属性,生活満足度尺度K(以下,「LSIK」),死別経験による成長感尺度(以下,「成長感尺度」),現在および死別時の情緒的・手段的サポート,主観的健康状態・経済状態,死別時の気分の落ち込みおよび生活上困難の有無等であった.有効回答279のうち死別群153名と非死別群126名についてMann-Whitney検定およびKruskal Wallis検定を行った.結果:LSIK得点は死別群と非死別群との間で差はなく,主観的健康状態および経済状態が高い者のほうがLSIK得点が高かった.死別群は同居家族からの情緒的サポートがある者のほうがLSIK得点が高かった.LSIK得点と成長感得点との間に相関はみられなかった.死別時の落ち込みがあり情緒的サポートがあった者あるいは生活上の困難があった者のほうが成長感が高かった.結論:配偶者と死別した高齢女性の生活満足度を高めるためには,よい健康状態と経済状態を維持すること,情緒的サポートを得ることが重要である.また,成長感を高めるためには,死別時にサポートを受け困難な状況を乗り越えることが重要である.