抄録
生活習慣の影響が検査値に現れると報告されている壮年前期(30〜49歳)の人々を対象に,高脂血症予防に関係する運動や食事の行動変容に影響を及ぼす自己効力感を測定する尺度を開発することを目的とした.壮年前期の高脂血症予防のための保健行動に対する自己効力感尺度の開発は2段階からなり,第1段階はインタビューから壮年前期の成人における高脂血症予防のための保健行動を明らかにし,尺度原案を作成した.尺度原案の内容妥当性を高めるために専門家7人による質問項目の妥当性の評価を行い,40項目からなる原案修正版を作成した.第2段階では2つの地方自治体職員を対象に,健診結果の配布と合わせて質問紙調査を行った.有効回答594人を分析に用い,尺度原案修正版40項目について因子分析を行った結果,3因子16項目からなる尺度が抽出された.3因子は「無理のない運動行動の変容」,「行動変容の拠りどころ」と「積極的な食行動の変容」と解釈した.尺度全体のCronbach's のα係数は0.855で,信頼性係数である再調査の級内相関係数は0.809であった.尺度得点と健康行動得点とは有意な関連を示した.尺度は健康行動と有意に関連しており,高脂血症予防のための保健行動を表していたといえる.また,尺度としての信頼性が高いことが確認された.しかし,調査において選択バイアスおよび応答バイアスが生じている可能性があった.