日本地域看護学会誌
Online ISSN : 2432-0803
Print ISSN : 1346-9657
保健事業の展開において保健師と事務系職員の意見が異なる状況に関する質的分析
大森 純子宮崎 紀枝麻原 きよみ百瀬 由美子長江 弘子加藤 典子梅田 麻希小林 真朝
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2007 年 9 巻 2 号 p. 81-86

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抄録

保健師は,人々の健康の増進を担う専門職として,個人,家族,集団,地域全体のニーズと組織の方針に基づいて保健事業を展開するため,時に事務系職員と意見が対立し,いかに判断し,行動すべきか悩むことがある.本論文では,保健師が遭遇する倫理的ジレンマのうち,保健事業の展開において事務系職員と意見が異なる状況に焦点を当て,その場面と対立内容を記述する.A県主催の保健師リーダー研修会の全参加者144名を対象に,自己記入式質問紙による調査を行い,66人からの回答と35事例の自由記載を得た.分析の結果,半数以上の保健師が日頃の保健事業の展開過程で事務系職員と意見が異なる倫理的ジレンマに遭遇しており,その場面としては,特に立案段階が多かった.意見の対立内容の分析からは,保健事業の内容よりもその手続きに関心のある事務系職員と,事業の手続きよりもその内容に関心のある保健師の考え方に相違があることが改めて明らかとなった.また,保健師と事務系職員それぞれの考え方の特徴だけでなく,事務系職員が客観的に現状の活動を捉えていると考えられる記載もみられた.人々の健康増進という活動の目的を事務系職員と共有することが重要であり,そのためには,保健師が日頃から保健事業の効果を事務系職員に理解できるように提示すると同時に,事務系職員の声に耳を傾ける姿勢をもつことも必要と考えられた.保健師と事務系職員がともに学び合い,連携を密に協働する必要性が示唆された.

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© 2007 一般社団法人 日本地域看護学会
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