抄録
本実践は,中学校において,円滑な教育相談体制を構築するために,企業資源計画(Enterprise Resources Planning:以下,ERP)という考え方を基軸として,教育相談活動を行ったものである。ERPとは,企業で発生する様々な情報を一元管理するシステムのことで,資源を最大限に活用し,効率の良い経営を目指すためのものである(小野,2024)。報告者は,A中学校における教育相談コーディネーター(以下,コーディネーター)として,不登校生徒や校内教育支援センター(通称・以下,校内適応指導教室※1)在籍生徒に対し,支援を行った。調査対象は,公立A中学校に勤務経験があるスクールソーシャルワーカーであり,当時の様子について聞き取りを行った。また,A中学校の教員を対象にアンケートを行った。学校現場では,チーム連携の重要性が認識されてはいるものの,実際には情報共有するための時間を取ることは難しい。そこでコーディネーターを中核とし,ERPの考えやハブ機能を取り入れた情報共有のためのシステムを工夫した。その結果,情報を一元管理することにより,円滑な支援を行うことができた。これらのことから,教育相談活動においてチーム連携を進めていくためには,コーディネーターの果たす役割が重要であり,ハブ機能やERPの考え方を活かした教育相談体制を構築していくことが有効であることが示唆された。