学級経営心理学研究
Online ISSN : 2434-9062
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選択された号の論文の7件中1~7を表示しています
  • 小野寺 正己
    2020 年 9 巻 p. 1-5
    発行日: 2020年
    公開日: 2021/02/09
    ジャーナル フリー
    本研究は,学級状態の違いが中学生の学習意欲と学力に影響を与えていることを統計的に検討することを目的とした。中学校3年間のデータを縦断的に検討することとし,341人の中学生が調査対象となった。学級状態の違いについては,中学校1,2年生の双方において良好な学級状態に所属していたかどうかを判断基準とした。その判断基準に基づき,良好な学級に所属していた生徒と所属していなかった生徒の中学校3年生の6月における学習意欲に関わる尺度得点と標準学力検査の学力偏差値の比較を行った。t検定の結果,良好な学級に所属していた生徒の学習意欲と学力が有意に高いことが明らかとなった。
  • 深沢 和彦, 河村 茂雄
    2020 年 9 巻 p. 7-17
    発行日: 2020年
    公開日: 2021/02/09
    ジャーナル フリー
    本研究では,通常学級においてインクルーシブ教育への対応が求められるようになった現在,インクルーシブ教育にマッチした学級経営に必要な教師の指導行動を明らかにし,学級経営の指針を得るために教師の自己評定による「インクルーシブ指導行動自己評定尺度」を作成することを目的とする。聞き取り調査により得られた指導行動を基に作成した原尺度を公立小学校の学級担任教師528名を対象に調査したところ,520名から有効回答が得られた。因子分析の結果,3因子12項目の尺度が作成され,信頼性,妥当性の確認がなされた。インクルーシブな指導行動として,「全体対応」,「架け橋対応」,「個別対応」の3つの指導行動が明らかとなり,その発揮には,教師の経験と知識理解の程度が関連していることが示された。
  • ―修正版グラウンデッド・セオリーを用いて―
    熊谷 圭二郎, 河村 茂雄
    2020 年 9 巻 p. 19-29
    発行日: 2020年
    公開日: 2021/02/09
    ジャーナル フリー
    本研究では,進学を重視する高等学校に在籍する生徒に対し,協働的学習に関するインタビュー調査を行い,他者と協働しながら学習を行うことに対してどのように感じ,どのようなプロセスを経るのかを検討することを目的とする。高校生30名に対して半構造化面接を行い,修正版グラウンデッド・セオリー・アプローチを用いて分析した。その結果,協働的学習は,まず形式的なものから始まり,その後の生徒同士の互恵的相互作用や学習に対する考え方などによって深い学びにつながる実質的なものになったり,個人学習志向や他者依存・交流志向を含む形式的なものになったりすることがわかった。とくにメンバー間の関係性は重要で,話し合いがうまく進まない場合,協働的学習は,やらされているという受動的なものとなる可能性があることがわかった。
  • 河村 明和
    2020 年 9 巻 p. 31-38
    発行日: 2020年
    公開日: 2021/02/09
    ジャーナル フリー
    本研究では「主体的に学習に取り組む態度」を測定するために主体的学習態度尺度の作成を目的とした。本研究における「主体的に学習に取り組む態度」の構成概念として,文部科学省(2019),経済協力開発機構(OECD)(2018)の内容より「学習方略」「主体性」「協働性」を想定し,調査を行った。対象は,A県B市の全公立中学校6校の生徒801名(男子384名,女子417名)を調査の対象とした。因子分析の結果,仮説通り,学習方略,主体性,協働性における3因子構造になり,またその信頼性を検討したところ3因子ともα係数が.85以上であり,一定の信頼性が得られた。さらに,主体的学習態度尺度の下位尺度と,河村(1999)が作成した,学校生活意欲尺度,河村(2001)が作成したソーシャルスキル尺度から,配慮のスキル,かかわりのスキルと相関分析を行い,構成概念妥当性を検討した。その結果「学習方略」「主体性」「協働性」すべてにおいて,学校生活意欲,ソーシャルスキルとの正の相関が確認され構成概念妥当性が確認された。以上の結果から,中学校における主体的学習態度尺度が作成された。
  • 四辻 伸吾, 水野 治久
    2020 年 9 巻 p. 39-51
    発行日: 2020年
    公開日: 2021/02/09
    ジャーナル フリー
    本研究では,学級生活志向性尺度を作成し,その信頼性と妥当性を調査した。小学生が自分の所属する学級集団の中でどのように生活していきたいのかについて尋ねる質問紙を用いて,小学校5・6年生644名を対象に質問紙調査を行い,学級生活志向性尺度を作成した。得られた因子は「他者重視」,「先生重視」,「自分重視」,「楽しさ重視」,「親友重視」と命名された。信頼性は,内的整合性によって確認された。妥当性に関しては,学級風土と関連が見られたことによって支持された。また,性差を検討したところ,「他者重視」について男子より女子の下位尺度得点が有意に高く,「自分重視」「楽しさ重視」について女子より男子の下位尺度得点が有意に高かった。さらに学年差を検討したところ,「他者重視」「先生重視」について6年生より5年生の下位尺度得点が有意に高く,「楽しさ重視」について5年生より6年生の下位尺度得点が有意に高かった。
  • ─小学校低学年と高学年の事例検討を通して─
    隂 菜穂子, 津中 友里菜, 若松 美沙, 若松 昭彦
    2020 年 9 巻 p. 61-73
    発行日: 2020年
    公開日: 2021/02/09
    ジャーナル フリー
    本研究の目的は,学級活動における児童の役割と,探究的な学びの姿につながる概念であるエンゲージメントとの関連について,事例を用いて検討することであった。小学校2年生2名と6年生2名の計4名の児童を対象に,話合い活動およびその後の実践で構成される学級活動での言動をエンゲージメントの3側面(行動的側面,感情的側面,認知的側面)から分析した。その結果,2年生の事例からは,話合い活動において黒板記録や司会といった司会グループとしての役割を経験することで,行動的側面および認知的側面のエンゲージメントが発現することが示された。また,6年生の事例からは,話合い活動やその後の実践での役割を経験することで,1年生に対する役割への専念,学校行事に対する目的の自覚といった行動的側面のエンゲージメントや,よりよい意見を考えることを意識した認知的側面のエンゲージメントが発現することが示された。これらの事例から,学級活動における児童の役割とエンゲージメントの発現が関連している可能性が示唆された。
  • ―大学教育におけるPjBL活動の改善を検討した先行研究を踏まえて―
    河村 志野
    2020 年 9 巻 p. 75-82
    発行日: 2020年
    公開日: 2021/02/09
    ジャーナル フリー
    小・中学校での子どもたちの学習活動が,アクティブラーニングの一つとされる総合的な学習の時間に代表される,自由度の高い学習活動となるための必要条件を検討するために,大学教育で行われているPjBLを主とした授業の失敗事例や改善点について,先行研究を展望して検討した。その結果,PjBLが学生にとってアクティブラーニングとなるようにするためには,学生同士の協働性の構築を支える教員側の対応が必要であることが明らかになった。さらに,小・中学校では授業における学習集団は,メンバーが固定され生活集団ともなる閉じた学級集団であるという特性があり,先行研究の知見を小・中学校の授業で援用するためには,この特性を踏まえて修正して活用することが求められることが考察された。
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