2024 年 28 巻 1 号 p. 125-136
コミュニケーション手段が多様化している現在においても,電話は依然として重要な手段として用いられ続けている.九州工業大学においては,戸畑・飯塚・若松の各キャンパスの建屋に電話網があり,各キャンパスに設置された構内交換機,キャンパス間内線(SIP回線)ならびに外線(公衆電話網)を組み合わせ,構内電話を提供している.構内電話については,維持コストが高額である点,部屋に電話を設置する想定のシステムであることから,場所に依存しない電話環境の提供が困難な点をはじめ,多くの課題がある.対して,近年ではIP電話の技術とSaaSを組み合わせたクラウド電話システムが提供されており,構内電話が抱える課題の多くが解消されることが期待される.
本学においては,クラウドサービスであるMicrosoft 365 A5にて利用可能な電話システムであるMicrosoft Teams電話を用いた構内電話の移行について,2022年6月より技術検証や方式の検討を実施し,2024年1月より順次移行を開始した.移行に伴い,管理コストの低減や豊富な機能が利用できる事を重視し,ダイレクトコーリングと呼ばれる公衆電話網の収容方式に対応した通信事業者を選定した.また,職域や電話の利用形態に応じて電話番号体系や発着信方式を定義し,窓口等の電話番号の変更が生じることなく,かつ,従来の構内電話設備が全廃可能な構成を実現した.