2024 年 28 巻 1 号 p. 16-22
大阪大学では,大学全体のデジタルトランスフォーメーション(DX)計画が策定されている.しかしながら,本学の情報システムは技術の老朽化,肥大化,複雑化が進み,業務の非効率化や高コスト,データ活用の遅れを引き起こす傾向にある.そこで,これらの問題に対応するため,大阪大学全体のDX化(OUDXと呼ぶ)に向け,DXを支えるICT基盤の主要な取り組みとして,ID統合構想「OUID」,ゼロトラスト対応ネットワークシステム「OUゼロトラスト」,学内共通プラットフォーム「iLPs-OU」の開発が進められている.2022年度には新たな本学の情報システムとして,OUID試行システムの初期プロトタイプが完成し,既存の本学の情報システムとの連携が進められている.さらに,2023年度からはOUIDを活用する「OU人財データプラットフォームプロジェクト」が立ち上げられ,DXを支える人財データベースの構築が開始された.これにより,学生や教職員が働きやすく学びやすい環境が整備されている.本論文では,特に「OUID」構想における新たなIDの導入と,その基盤となるOUIDシステムの構築の経過を報告する.