2025 年 29 巻 1 号 p. 282-287
大学運営における業務の効率化と質的向上が求められる中,業務自動化ツールの導入が注目されている.そこで,Microsoft社が提供するPower Automate Desktop(PAD)を活用し,大学事務職員を対象とした業務自動化セミナーを設計・実施した.セミナーは実際にPADを操作しながら学習する実践型形式で行われ,PADの基本操作から応用的な自動化フローの構築までを扱った.参加者への質問紙調査の結果,PADの理解度や演習の達成度,業務改善への意識において一定の効果が確認されたほか,PCスキルや業務自動化ツールの利用経験が成果に影響を与える可能性も示唆された.
近年,急速な少子化に伴う18歳人口の減少や大学進学者数の将来的な縮小など,大学を取り巻く社会的・経済的環境は一層厳しさを増している.こうした状況の中においても,大学には学修者本位の教育の実現,研究力の強化,地域社会との連携,そして人材の育成といった多面的な役割が求められており,大学運営の課題はますます多様化・深刻化している[1].しかし,人的・物的資源が限られた環境下で教育・研究の質を維持・向上させるためには,業務の効率化を図るとともに,デジタル技術の積極的な導入によって大学運営のあり方そのものを抜本的に見直すことが求められている[2].このような課題に対応する手段として,近年注目されているのがデジタル・トランスフォーメーション(DX)である.DXは業務のIT化にとどまらず,デジタル技術を活用して組織の構造や文化,業務プロセスを根本的に変革することを目的とした概念であり,大学においてもその導入が必要とされている[3].大学におけるDX推進の必要性が高まる中,業務自動化の具体的な実践事例も増えつつある.例えば,早稲田大学では業務自動化ツールやクラウドサービスの導入により大学事務の効率化を進め,様々な部署における業務時間の削減や職員のIT活用力向上を実現し,柔軟で持続可能な大学運営体制の構築を進めている[4].大阪大学でも業務自動化ツールの全学的な活用と現場主導の体制および内製研修により,業務効率化と職員のITスキル向上を同時に推進されたと報告されている[5].大学事務職員が日常的に行っている定型的な業務に対して情報技術を活用した改善を実施することで,大学運営の改革につながる可能性が示唆される.
こうした先行事例を踏まえ,旭川医科大学において大学事務職員に対する業務自動化ツールの導入に向けた実践型セミナーを試行した.本稿では,当該セミナーの設計と実施内容を報告するとともに,参加者への質問紙調査を通じて得られた効果や課題を分析し,大学における業務自動化ツールの可能性について考察する.
本研究において実施したセミナーでは,業務自動化ツールとして,Power Automate Desktop(PAD)を活用した.Microsoft社によって提供されているPADは,コンピューター上での操作を自動化する機能を有するRobotic Process Automationツールである[6].Windows11環境においては基本機能が無償で利用可能であることから,近年その利便性と導入の容易さにより注目を集めている.PADの大きな特長の一つは,ユーザーインターフェースにドラッグアンドドロップ方式を採用している点である.これにより,プログラミングに関する専門的知識を有しないユーザーであっても,直感的に自動化フローを構築することが可能となっている.また,Microsoft Office製品との高い互換性を有しており,Excel,Word,Outlookなどのアプリケーションと連携することで,日常的な業務プロセス,たとえばデータ入力,ファイル整理,電子メールの送信といった作業の自動化が実現できる.紙面の都合上,本稿ではPADの詳細な操作方法は割愛するが,基本的な操作画面を説明する.PADを起動すると,業務自動化フローの作成に用いるユーザーインターフェースが表示され,左側には各種アクションを一覧表示する「アクション」パネル,中央にはアクションを組み合わせてフローを構築する「フロー」エリアが配置されている(図1).「アクション」パネルには,多くの個別アクションが利用可能であり,これらのアクションを組み合わせることで,業務内容に応じた柔軟な自動化フローの設計が可能となる.

操作の基本的な流れとしては,「アクション」パネルに表示されるアクション要素の中から目的に応じたアクションを選択し,ドラッグアンドドロップによって「フロー」エリアに配置する.複数のアクションを順序立てて組み合わせることで,特定の業務プロセスに適した自動化フローを構築することが重要となる.フローの作成後,「実行」ボタンを押すことで,構築された一連の処理が自動で実行される.図1においては,Excelのデータを読み取り,加工した後,別のExcelファイルにデータをコピーする例を示した.順に説明すると,「1.Excelの起動」で指定したExcelファイルを開き,「2.Excelワークシートから読み取る」により,中のデータを読み取る.続いて,「3~4.Excelワークシートから行・列を削除」によりデータ加工をしたうえで,「5.Excelワークシートからセルをコピー」により,特定の列をコピーする.そして最後に,「6.Excelの起動」により別のExcelファイルを開き,「7.Excelワークシートにセルを貼り付け」により完了となる.このように,PADは視覚的かつ直感的な操作体系を通じて,非プログラマーのユーザーに対しても自分で作成した業務自動化を可能とする環境を提供している.
2.2 研修内容研修は「業務自動化セミナー」と称し,旭川医科大学の事務職員を対象に実施された.旭川医科大学では,他社の業務自動化ツールが一部導入されていたが,更なる業務改善のため,全学的なPADの導入が検討されていた.よって,業務自動化ツールを全く利用したことのない初心者が,PADの基礎知識と基本的な操作方法を習得し,実践的な活用方法を体験することを目的にセミナーを構成した.2時間という限られた時間の中で,PADの基礎知識と操作方法の習得を目指した構成としたため,ブラウザーとExcelのみに焦点を当てた演習内容とした.セミナーの概要を図2に示す.

具体的な学習項目としては,PADの基礎知識となる業務自動化フローを作成するためのインターフェースの理解と利用方法をはじめ,PADのアクション,並びに,複数のアクションを組み合わせた業務自動化フローの作成方法とした.目標を達成するための実習として,ブラウザー操作およびエクセル操作をまず扱った上で,応用として,ブラウザー上のデータのウェブスクレイピング,エクセルデータのウェブ上への入力の演習を実施した.また,研修後半では,参加者が自分の業務に応用できるよう,繰り返し動作を行うループ処理の方法など汎用性の高い機能の解説と実習も実施した.参加者が一人一台のコンピューターを使用できる環境を整え,実践的な学習を重視し,研修時間は2時間とした.セミナーの前半30分では,PADで自動化可能な業務がイメージできるよう,講師が作成したPADの実例(複数のPDFを読み取り,Excelに必要箇所だけ転記する処理や,ブラウザーを操作して特定のWebページに掲載されている情報を取得し,Excelに保存する処理など)を紹介するとともに,PADの基礎知識を説明した.続けて,特定のホームページを開くなどのブラウザー操作や,Excelファイルを開いてデータを読み取るなどのExcel操作を通じて,PADのインターフェースの基礎的な操作演習を実施した.後半の90分では,旭川医科大学のホームページを開き,同大学の研究者総覧の検索欄に特定の教員の名前を入力し,検索ボタンを押すなどのブラウザー操作の発展的な学習や,読み取ったExcelデータを,ブラウザー上の入力欄に入力するなど,Excelとブラウザーを組み合わせた応用操作による業務自動化フローの作成に取り組んだ.各演習項目では,まず参加者は講師とともに課題となるフローを作成し,その後,各自で同様のフロー作成に取り組み,最後に講師が見本を提示することで理解の定着を図った.
後半90分の演習の中で,特に難しいと思われる項目は,変数の利用方法であった.例えば,3行4列目までにデータが含まれるExcelファイルを利用するPADフローであれば,Excelファイルの読み取り範囲を3行目と4列目と数値で指定すれば良いが,それではデータ量の異なるExcelファイルには応用できない.そこで,Excelファイルの最初の空の行・列の情報を変数として取得し,その変数を利用することで,データが含まれる行と列が異なるExcelファイルに対応可能なPADフローが作成できる.個別演習において,参加者が作成したPADがうまく作動しなかった際は,変数設定が適切にできていない場合が多かった.
セミナーの効果を確認するために,Web上で質問紙を作成した.質問紙には,参加者に関する基本情報として,所属,職位,自身のPCスキル(初級・中級・上級)を含めた.旭川医科大学では他社の業務自動化ツールが一部導入されており,また,PADは無料で利用できることから,特定のツールに限らず,どのような種類の業務自動化ツールでも,利用経験があるかどうかを質問事項に含めた.セミナーに関する評価項目として,セミナー内容の理解度,個別演習における到達度,セミナーを通じた業務自動化や業務改善に対する理解の深まり,さらに,現在の業務においてセミナーで学んだ内容が活用可能か否かについて尋ねた.加えて,参加者が具体的に応用可能と考える業務内容や,セミナーに関する自由記述欄を設け,参加者の意見や実践的な視点も把握した.
質問紙の実施にあたっては,セミナー終了後,Web上の質問紙フォームへのリンク(URL)を参加者に提示し,任意での回答を依頼した.回答に際しては,収集された情報は集団データとしてのみ使用し,個人が特定されることは一切ない旨を明記した上で,同意を得た.
3.2 質問紙調査の結果 3.2.1 回答者の属性参加者約50名のうち,34名からの有効回答を得た.回答者の属性を表1に示す.
| 回答数 | 割合 | |
|---|---|---|
| 所属 | ||
| 経営企画課 | 9 | 26% |
| 人事課 | 6 | 18% |
| 学生支援課 | 5 | 15% |
| 医事課 | 3 | 9% |
| 研究支援課 | 3 | 9% |
| 総務課 | 3 | 9% |
| 施設課 | 2 | 6% |
| 医療支援課 | 1 | 3% |
| 会計課 | 1 | 3% |
| 入試課 | 1 | 3% |
| 職位 | ||
| 係員 | 15 | 44% |
| 係長 | 7 | 21% |
| 主任 | 6 | 18% |
| 課長 | 2 | 6% |
| 専門職員 | 2 | 6% |
| 事務補佐員 | 1 | 3% |
| 非常勤職員 | 1 | 3% |
| 自身のPCスキル | ||
| 1.初級(ちょっと苦手) | 11 | 32% |
| 2.中級(普通に扱える) | 22 | 65% |
| 3.上級(割と得意な方) | 1 | 3% |
| 業務自動化ツール利用の経験 | ||
| あり | 14 | 41% |
| なし | 20 | 59% |
| 全体 | 34 | 100% |
※構成比は有効数字第3位以下を四捨五入しているため,割合の合計値は必ずしも100%とはならない.
所属別に見ると,最も多くの回答が寄せられたのは経営企画課であり,全体の約四分の一となる26%を占めた.次いで人事課が18%,学生支援課が15%と続き,その他の課からも幅広く回答が得られた.職位では係員が最も多く,全体の4割強となる44%を占めた.係長や主任といった中堅層も一定数含まれており,管理職,専門職員,非常勤職員からの回答も見られた.PCスキルの自己評価に関しては,「中級(普通に扱える)」と回答した者が65%と多数を占めたが,「初級(ちょっと苦手)」とした回答者も32%であった.業務自動化ツールの利用経験については,「あり」が41%,「なし」が59%であり,過半数の職員が未経験であった.
3.2.2 全体集計結果まず,表2の「全体集計」を報告する.本セミナーの理解度に関する設問においては,「よく理解できた」と回答した者が12名(36%),「やや理解できた」と回答した者が19名(58%)であり,参加者の大多数が内容を概ね理解できたことが明らかとなった.個別演習の達成度に関しては,「よくできた」との回答が16名(48%)と最も多く,次いで「ある程度できた」が13名(39%)であった.これらの結果から,参加者はセミナー内容の理解に加え,実践的な演習においても一定の成果を上げていたことが確認された.さらに,業務自動化および業務改善に対する理解の深化については,「とても深まった」との回答が22名(67%),「やや深まった」が10名(30%)であり,PADの操作を通じて業務改善に対する認識が高まったことが示唆された.今後の業務における活用意識については,「ぜひ活用したい」との回答が25名(74%),「やや活用したい」が9名(26%)であり,参加者の多くが実務への応用に対して積極的な姿勢を示していた.最後に,現在の業務においてPADを活用して自動化が可能な業務が存在するかという問いに対しては,「ある」と回答した者が25名(74%)を占めており,具体的な応用可能性が高いことも示された.
| 全体集計 | クロス集計「PCスキル×業務自動化ツールの経験」 | |||||||||
|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|
| 初級・なし | 初級・あり | 中級・なし | 中級・あり | |||||||
| 回答数 | 割合 | 回答数 | 割合 | 回答数 | 割合 | 回答数 | 割合 | 回答数 | 割合 | |
| セミナーの理解度 | ||||||||||
| よく理解できた | 12 | 36% | 2 | 25% | 0 | 0% | 3 | 25% | 7 | 70% |
| やや理解できた | 19 | 58% | 5 | 63% | 3 | 100% | 8 | 67% | 3 | 30% |
| あまり理解できなかった | 2 | 6% | 1 | 13% | 0 | 0% | 1 | 8% | 0 | 0% |
| ほとんど理解できなかった | 0 | 0% | 0 | 0% | 0 | 0% | 0 | 0% | 0 | 0% |
| 個別演習の達成度 | ||||||||||
| よくできた | 16 | 48% | 3 | 38% | 2 | 67% | 4 | 36% | 7 | 64% |
| ある程度できた | 13 | 39% | 4 | 50% | 1 | 33% | 5 | 45% | 3 | 27% |
| あまりできなかった | 1 | 3% | 0 | 0% | 0 | 0% | 1 | 9% | 0 | 0% |
| ほとんどできなかった | 3 | 9% | 1 | 13% | 0 | 0% | 1 | 9% | 1 | 9% |
| 業務自動化や改善に対する理解の深まり | ||||||||||
| とても深まった | 22 | 67% | 5 | 63% | 0 | 0% | 8 | 67% | 9 | 90% |
| やや深まった | 10 | 30% | 3 | 38% | 3 | 100% | 3 | 25% | 1 | 10% |
| あまり深まらなかった | 1 | 3% | 0 | 0% | 0 | 0% | 1 | 8% | 0 | 0% |
| ほとんど深まらなかった | 0 | 0% | 0 | 0% | 0 | 0% | 0 | 0% | 0 | 0% |
| 今後の業務における活用 | ||||||||||
| せひ活用したい | 25 | 74% | 5 | 63% | 1 | 33% | 9 | 75% | 10 | 91% |
| やや活用したい | 9 | 26% | 3 | 38% | 2 | 67% | 3 | 25% | 1 | 9% |
| あまり活用したくない | 0 | 0% | 0 | 0% | 0 | 0% | 0 | 0% | 0 | 0% |
| 全く活用したくない | 0 | 0% | 0 | 0% | 0 | 0% | 0 | 0% | 0 | 0% |
| 現在の業務における活用の可能性 | ||||||||||
| ある | 25 | 74% | 3 | 38% | 2 | 67% | 9 | 75% | 11 | 100% |
| ない | 9 | 26% | 5 | 63% | 1 | 33% | 3 | 25% | 0 | 0% |
| 全体 | 34 | 100% | 8 | 100% | 3 | 100% | 12 | 100% | 11 | 100% |
※中級・ありの回答者1名における「セミナーの理解度」および「業務自動化や改善に対する理解の深まり」の回答が無回答であるため,これらの質問に対する全体数は表示の数値より-1となる.
※構成比は有効数字第3位以下を四捨五入しているため,割合の合計値は必ずしも100%とはならない.
続いて,PCスキル(初級・中級)および業務自動化ツールの利用経験(あり・なし)の組み合わせごとの分析結果を示す(表2「クロス集計」).なお,PCスキルが「上級」と回答した1名は,クロス集計においては「中級」に含めた.セミナーの理解度に関しては,PCスキルが中級であり,かつ業務自動化ツールの利用経験があるグループにおいて,「よく理解できた」と回答した割合が最も高く,70%であった.一方で,同じく中級スキルを有しながらもツール利用経験がないグループでは,その割合が25%であり,PCスキルが初級の参加者の理解度は比較的低かった.よって,セミナー内容の理解において,PCスキルの高さのみならず,業務自動化ツールの使用経験も重要な要因となる可能性が示された.次に,個別演習の達成度に関しては,PCスキルが初級または中級であり,かつ業務自動化ツールの利用経験があるグループにおいて,「よくできた」と回答した割合が64%と高かった.実践的な演習においては,スキルレベルにかかわらず,ツールの使用経験が成果に寄与することが示唆される.
さらに,業務自動化や業務改善に対する理解の深まりについては,PCスキルが中級でツール利用経験があるグループにおいて,「とても深まった」と回答した割合が90%と最も高かった.一方で,PCスキルが初級で,かつツール未経験のグループにおいても,「とても深まった」との回答が63%となり,一定の効果が認められた.参加者は,スキルや経験にかかわらず,業務改善への意識向上に寄与していることが明らかとなった.
今後の業務における活用意向については,PCスキルが中級であり,かつ業務自動化ツールの使用経験がある参加者は,「ぜひ活用したい」と回答した割合が91%と非常に高かった.一方で,PCスキルが初級で,かつツール未経験の参加者においても63%が「ぜひ活用したい」と回答しており,経験の有無にかかわらず一定の活用意欲が示された.現在の業務における活用可能性については,中級者かつ経験者のグループにおいて100%が「ある」と回答し,高い活用可能性が示された.
3.2.4 自由記述回答の結果現在の業務に対するPADの活用の可能性について,「ある」と回答した25名のうち21名から,具体的な業務に関する自由記述回答を得た(図3).

回答を見ると,業務自動化の対象として,定型的かつ繰り返し発生する作業が多数確認された.具体的には,ExcelやCSVデータの集計・転記,他システムへのデータ入力,メール送信業務,申請書類のデータ化,定期的な情報送付,照会事項の作成,支払処理,通勤手当の登録などが挙げられ,PADなどのツールを活用することで効率化が期待される.
最後に,セミナーに関する自由記述回答について述べる.参加者の自由記述による回答からは,教材を用いた実習形式が理解の促進に寄与したとの評価が多く見受けられた.特に,「手を動かしながら学べたこと」「演習を通じて手順を体得できたこと」など,体験的な学習が有効であったことが強調されている.また,PADの基本的な機能や操作方法に加え,ループ処理や空セルの範囲指定といった応用的な内容に触れられた点も,参加者にとって有益であったと評価された.初学者にとっては,専門用語の丁寧な解説や段階的な指導が理解を支える要素となり,PAD未経験者からも「基礎から丁寧に教えてもらえた」「初めて触れる内容だったが勉強になった」といった肯定的な意見が寄せられた.一方で,質問票の結果から,PCスキルが初級でツール未経験の参加者の評価は相対的に低く,「もう少し時間があればよかった」「ゆっくり操作方法を学びたい」といった時間配分への要望も見受けられ,今後の改善の余地も示された.本セミナーは業務自動化に対する理解と実践力の向上に資する内容であったと概ね評価できるかもしれないが,一方で,初級者を想定し,導入部分における基礎知識のより丁寧な説明などの工夫も必要となる.
大学事務におけるPADの活用のメリットとして,単なる業務の効率化にとどまらず,業務の目的や手順の見直し,不要業務の廃止,職員の働き方改革などの全学的な大学事務の構造変革につながることが期待される[7].
本研究では,大学事務職員を対象とした業務自動化セミナーの設計・実施を通じて,PADの活用可能性とその効果を検証した.PCスキルや業務自動化ツール経験の異なる参加者の多くがセミナー内容を理解し,実践的な演習においても一定の成果を上げたことから,大学事務職員に対しても,業務自動化ツールの導入が有効である可能性が示唆された.PCスキルや業務自動化ツールの利用経験といった参加者の属性が,理解度や活用意欲に影響を与えることが明らかとなった.特に,スキルや経験が豊富な参加者ほど高い効果を示した一方で,初学者に対してはより丁寧な導入や支援が必要であることも確認された.これらの知見は,今後の研修設計において,参加者の多様な背景に応じた柔軟な対応の必要性が示唆される.自由記述においては,参加者が自身の業務における具体的な応用可能性を多数挙げており,業務自動化が大学事務職員の日常業務において実践的な価値を持つ可能性も示された.したがって,こうした研修を継続的に実施し,実務への定着を図るとともに,組織全体で業務改善文化の醸成を目指すことが重要である.本セミナーは2時間の1回の実施であったにもかかわらず,参加者の意識や理解に一定の変化をもたらした点において意義深い.今後は,より多様な職員層を対象とした研修展開や,実務に即した応用事例の共有を通じて,大学における業務自動化のさらなる推進が期待される.
最後に,本研究の限界について述べる.まず,サンプル数が少ないため,得られた結果を母集団全体に一般化するには慎重な解釈が求められる.特にクロス集計においては,各群のサンプル数が十分とは言えず,「PCスキル初級・経験あり」群に至っては回答者が3名にとどまり,属性の偏りが見られた.さらに本研究で実施された研修は筆頭著者が担当しており,その内容や指導方法が参加者の理解度や達成度に影響を与えた可能性がある.また,質問紙調査の結果からは,概ね研修が適切に実施されたと考えられるが,研修の内容や方法が異なれば,同様の結果が得られるとは限らない.自由参加形式のセミナーであったこと,講師が関係のある人物であったこと,あるいはセミナー実施に対する感謝の意が回答に影響を及ぼした可能性も否定できず,得られた結果を一般化する際には慎重な解釈が求められる.
本セミナーの実施にあたり,旭川医科大学事務局「DX推進チーム」の皆様には多大なるご協力を賜り,心より御礼申し上げます.また,旭川医科大学インスティテューショナル・リサーチ室の齊藤典子さんには,本稿に対する貴重なご意見をいただき,感謝申し上げます.