学術情報処理研究
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原著論文
大学の同期型ハイブリッド授業におけるオンライン受講の選択要因に関する検証
伏木田 稚子大浦 弘樹光永 文彦吉川 遼加藤 浩
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ジャーナル オープンアクセス HTML

2025 年 29 巻 1 号 p. 7-14

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Abstract

本研究では「同期型ハイブリッド授業における受講方法の選択(受講パターン)に何が影響を与えているのか」というリサーチクエスチョンを立て,A)授業の位置づけ(科目区分,授業方法),B)学生の基本特性(性別,学年,片道の通学時間),C)学生の受講姿勢(学習への取り組み方,授業の受講動機,オンライン受講の理由)と,オンライン受講との関係を検証した.分析には,同期型ハイブリッド授業の受講経験があり,受講方法を一部またはすべての回で自由に選ぶことができた376名の回答データを用いた.A)B)についてはダミー変数,C)については因子分析により変数を構成した上で,計13変数を説明変数,受講パターンを目的変数とするモデルを組み立て,判別分析を行った.同期型ハイブリッド授業におけるオンライン受講の選択に寄与したのは,「通学や教室移動にかかる時間,感染リスクなどの負荷を軽減したいという理由」「学習に取り組む際,物事がうまくいかない状況(例.オンライン受講に伴うパソコンやインターネットのトラブル)を不安に感じたり心配し過ぎたりしない方略」「学年が1年生であること」「片道の通学時間が30分未満であること」だと示された.

1  はじめに

1.1  大学におけるハイブリッド授業の実践

COVID-19の5類感染症移行後,多くの大学が対面授業を再開した.そうした中で,コロナ禍に浸透したオンライン授業や,対面授業とオンライン授業を組み合わせたハイブリッド授業の実施を認めているケースは少なくない.例えば,東京科学大学(旧・東京工業大学)は,学内のリソースを最大限に活用し,質の高い教育を提供するために,Zoomを用いたライブ型のオンライン授業を実施している[1].また,神戸大学では,遠隔(オンライン)の利点を活かし,対面授業に遠隔を取り入れたハイブリッド授業が認められている[2]

かねてより,対面とオンラインの組み合わせは,時間や場所の制約を減らし,学習者にとってのフレキシビリティを高めると評価されてきた[3].コロナ禍で広く知られた,通学コストの削減や授業動画の再視聴というオンラインの利点は,ハイブリッド授業の設計にも有用だと考えられる[4].一方で,交流上の距離(transactional distance)と呼ばれる心的なコミュニケーション空間が広がると,オンラインでの社会的相互作用が滞り,学習者が孤立する現象も起こりうる[3].とりわけ,対面授業がオンラインで同時配信される同期型ハイブリッド授業の場合,対面よりもオンライン受講の学生の方がこうした問題に直面しやすいだろう.

1.2  同期型ハイブリッド授業の現状

同期型ハイブリッド授業とは,「対面の学生と遠隔の学生が同時に,ただし異なる場所で,同期型の学習空間を共有しながら学習活動に参加する実践」[5]を指す.コロナ禍では,軽症者や濃厚接触者,感染リスクが心配な学生,来日できない留学生などがオンライン受講できるところに,当該授業の利点があった[6, 7].加えて,同期型ハイブリッド授業は対面授業と同等以上に好まれ,重要とみなされる傾向も指摘されている[8]

ただし,学生が受講方法を自由に選択できる場合,対面の学生がオンラインばかりを選ぶ学生に対して,不公平さを感じる可能性がある[9].学習意欲の低さがオンライン受講の選択につながりうるという指摘[8]もまた,対面に比べてオンラインの方が真剣に学習しないという大方の予想に通じるだろう.COVID-19で露見した課題は今後も議論すべきもので,そのために同期型ハイブリッド学習の研究知見が必要だ[5]という主張を踏まえると,受講の様相を学生目線で検討することは有意義だと考えられる.

2  問題と目的

同期型ハイブリッド授業におけるパフォーマンスや経験については,出席選択(attendance choices/decisions)との関係を検証した研究がわずかにある.例えば,対面とオンラインの間で学業成績を比較した結果,参加形態にかかわらず同程度だった[10, 11]ことが明らかになっている.ただし[11]は,COVID-19関連の問題(例.感染リスク,家族への責任)や大学への距離を理由にオンラインを選んだ学生,孤独感から対面に切り替えた学生の事例を示しており,出席選択にかかわる要因は複雑だと推察される.

また,同期型ハイブリッド学習の先行研究をレビューした[12]は,混合研究法や質的分析によるケーススタディが主流で,実践の内容と効果を扱った実証研究は限定的だと論じた.その上で,より多様な参加者データを収集し,特に遠隔参加者(ここではオンライン受講生と同義)の学習経験を向上させる工夫に関する研究を希求している.ゆえに,前節で言及したオンライン受講の選択に寄与する要因が解明されることで,こうした展望の一助になりうるだろう.

そこで本研究では,「同期型ハイブリッド授業における受講方法の選択(以後,受講パターンと表記)に何が影響を与えているのか」というリサーチクエスチョンを立てた.具体的には,A)授業の位置づけ,B)学生の基本特性,C)学生の受講姿勢と,受講パターン(対面受講・対面とオンラインの混合受講・オンライン受講)との関係について,特にオンライン受講に焦点化しながら検証することを目的とした1

3  方法

3.1  データの収集

株式会社クロス・マーケティングに,オンライン調査の画面作成およびデータ収集を依頼した.調査の実施期間は,2023年3月13日(月)~15日(水)で,803名の学生(パネル)より回答が得られた.同期型ハイブリッド授業の受講経験があったのは612名(76.21%)で,そのうち,受講方法を一部もしくはすべての回で自由に選ぶことができたのは376名(61.44%)であった.

調査会社を利用したオンライン調査については,a)母集団に対する標本の代表性,b)回答の正確さと妥当性を含む調査誤差の問題が指摘されている[13].a)については,回答者の居住地(都道府県),学年,大学区分(国立・公立・私立),専攻などが偏らないよう,調査会社にデータ収集を依頼した.

b)への対応としては,「あなたが大学でこれまでに受講したハイブリッド形式の授業が複数ある場合は,特に印象に残ったものを1つだけ選び,以下の項目についてお答えください.」と回答対象の授業を限定した.その上で,受講年度,授業の名称や学習内容,取り組んだ学習活動などを詳細に把握するよう努めた.加えて,未回答,重複回答,回答矛盾を防ぐために,システム上で回答の必須化と排他の設定を行ったほか,データクリーニング時に回答不備の有無を確認した.

3.2  調査票の構成

調査票は,計11のスクリーニング項目と,計16の本調査項目から構成した.スクリーニング項目には,性別,年齢,居住地(都道府県),学年,大学の区分(国立・公立・私立),専攻([14]による「学科系統分類表」の大分類を引用),片道の通学時間,学習への取り組み方,同期型ハイブリッド授業の受講経験の有無などが含まれる.スクリーニング項目から本調査項目に移る画面には,「オンライン調査へのご協力のお願い」と題し,調査の目的と以下に示す倫理的配慮2点を明記した.

・ 得られたデータは,実施者の責任で厳重に管理し,個人を特定できない形で処理,集計する

・ 個人情報を匿名化した上で回答データを分析し,学内外の学会・研究会等で報告,または学術雑誌に論文投稿をする場合がある

本調査項目の冒頭では,同期型ハイブリッド授業について,「教員が教室で行っている授業をウェブ会議システムで同時配信する形式」と説明した.3.1で前述した通り,特に印象に残った1つの同期型ハイブリッド授業について,3.3.1以降に示す質問項目への回答を求めた.

3.3  分析対象の質問項目

3.3.1  A)授業の位置づけ

科目区分

「その授業はカリキュラムの中でどのような位置づけでしたか?」という質問に対して,「必修科目」「学部・学科・コースの推奨科目」「選択科目」の中から,あてはまる選択肢をひとつ選ぶよう求めた.

授業方法

「その授業はどのような方法で行われましたか?」という質問に対して,「講義」「ゼミナール」「ゼミナール以外の演習」「実験」「実習(教育実習,看護実習など)」の中から,あてはまる選択肢をひとつ選ぶよう求めた.

3.3.2  B)学生の基本特性

性別

「性別をお選びください.」という教示に対して,「男性」「女性」「その他」の中から,あてはまる選択肢をひとつ選ぶよう求めた.なお,回答は任意であることを明記した.

学年

「学年をお選びください.」という教示に対して,「1年生」「2年生」「3年生」「4年生」「その他(5年生以上,科目等履修生など)」の中から,あてはまる選択肢をひとつ選ぶよう求めた.

片道の通学時間

「大学までの片道の通学時間をお選びください.」という教示に対して,「30分未満」「30分以上1時間未満」「1時間以上1時間半未満」「1時間半以上」の中から,あてはまる選択肢をひとつ選ぶよう求めた.

3.3.3  C)学生の受講姿勢

学習への取り組み方

「日頃の学習への取り組み方について,あてはまる選択肢をひとつずつお選びください.」という教示に対して,以下に示す18項目を提示した.選択肢は,「あてはまらない」「あまりあてはまらない」「ややあてはまる」「あてはまる」の4件法とした.

1.授業で理解すべき内容を考える

2.授業で与えられた課題によって取り組み方を考え直す

3.授業中に,これまで理解してきた内容を確認する

4.授業中に内容を十分に理解できなかったとき,後で理解し直す

5.授業中に退屈したとき,頑張って集中する

6.授業の内容に興味がなくなってきても,自分を奮い立たせて話を聞く

7.興味がない授業でも,やる気を持って受ける

8.授業で与えられた課題に興味がなくなったとき,集中するよう努力する

9.授業の内容に興味がなくても,内容を理解するように努力する

10.授業中に思考がぼんやりし始めたとき,集中するよう努力する

11.時間を決めて学習課題に取り組む

12.学習するとき,学習時間を決めて取り組む

13.試験の前には計画を立てて学習する

14.一週間の学習の予定を立てて行動する

15.自分が考えていたより物事が悪くなりそうでも,心配しすぎないようにする

16.事態の悪化を考えすぎないようにする

17.物事がうまくいかなかったとき,心配しなくていいと自分自身に言う

18.物事がうまくいくかどうか不安に感じたとき,大丈夫だと自分自身に言う

これらは,[15]の自己調整方略を測る「SRLS尺度」のうち,因子負荷量.50以上の項目を借用した.

授業の受講動機

「あなたはその授業をどのような理由で選択しましたか?」という質問に対して,以下に示す16項目のそれぞれに,あてはまる選択肢をひとつずつ選ぶよう求めた.選択肢は,「あてはまらない」「あまりあてはまらない」「ややあてはまる」「あてはまる」の4件法とした.

1.幅広い知識を身につけたかったから

2.もともとその授業内容に関心があったから

3.今後役に立ちそうな内容だったから

4.自分に必要な力が身につくと思ったから

5.シラバスを読んで興味を持ったから

6.授業のタイトルがおもしろそうだったから

7.授業のやり方がおもしろそうだったから

8.先輩に勧められたから

9.学部・学科のガイダンスなどで勧められたから

10.サークル等が提供している授業情報で評判がよかったから

11.多くの人がその授業をとっているから

12.Webサイトで授業の評判がよかったから

13.友だちが取っているから

14.授業内容がやさしそうだから

15.楽に単位が取れそうだから

16.授業の負担が大きくなさそうだから

これらは,[16]の「教養教育科目における授業選択理由」のうち,本研究の目的に即した項目を借用した.

オンライン受講の理由

「あなたはその授業の受講方法について,どのような理由でオンライン参加を選びましたか?」という質問に対して,以下に示す13項目の中から,あてはまる選択肢をすべて選ぶよう求めた.

1.新型コロナウイルス感染症の感染リスクを下げられる

2.天気が悪い日に外に出なくてよい

3.通学時間がかからない

4.教室移動をしなくてよい

5.教室内の私語が聞こえない

6.ノートを取りやすい

7.インターネットで授業に関連することを調べやすい

8.授業中に教員に質問しやすい

9.授業中に他の受講生とコミュニケーションをとりやすい

10.授業に集中できる

11.オンライン受講に慣れている

12.そのほか

13.特に理由はない

これらは,[17]の「コロナ禍のオンライン講義に関する学生意識調査」ならびに,[18]の「コロナ禍での授業形態にかかる学生の意見調査」の結果を参考に作成した.

3.3.4  受講パターン

「あなたはその授業の受講方法について,対面参加とオンライン参加をどのような頻度で選びましたか?」という質問に対して,以下に示す5項目の中から,あてはまる選択肢をひとつ選ぶよう求めた.

1.常に対面参加を選んだ

2.オンライン参加よりも対面参加を多く選んだ

3.対面参加とオンライン参加を同程度で選んだ

4.対面参加よりもオンライン参加を多く選んだ

5.常にオンライン参加を選んだ

3.4  分析の方法

本研究の目的は,「同期型ハイブリッド授業における受講パターンに何が影響を与えているのか」というリサーチクエスチョンに対して,A)授業の位置づけ,B)学生の基本特性,C)学生の受講姿勢と,受講パターン(常に対面・対面とオンラインの混合・常にオンライン)との関係を検証することである.オンライン受講を選んだ学生とそうでない学生の違いを説明する上で,A)~C)のうちどの要因がどの程度,受講パターンの識別に寄与するのかを,線形判別分析(Linear Discriminant Analysis: LDA)により考察した.判別分析とは,「いくつかの集団や群に属する個人について多変量データが得られているときに,各個人が属する集団同士がなるべくよく区別されるように,多変量データの重みつき合計点を作る」手法であり,集団の識別上で有効な判別は何かを探ることができる[19].つまり本分析モデルは,目的変数が名義尺度の際に,複数の説明変数でどれほど正しく目的変数を分類(識別,判別と同義)できるかを評価するものである[19, 20]

はじめに,分析に使用するすべての変数について,回答データの基本統計量や度数分布表を確認した.C)については,質問項目間のポリコリック相関係数(polychoric correlation:多分相関係数)を求めた後,カテゴリカル因子分析により変数を構成して因子得点を算出した.続いて,A)~C)と受講パターンとのポリコリックまたはポリシリアル相関係数(polyserial correlation:多分系列相関係数・重双相関係数)をもとに,判別分析のモデルを組み立てた.

ポリコリック相関係数とポリシリアル相関係数は,「データの表現形が順序尺度であって,その背後に連続的なものがある」という基本的な考え方に基づく[21].例えば,-∞から∞まで滑らかに変化する社会的態度について,「賛成・わからない・反対」の3段階や「非常に賛成~非常に反対」の5段階で表現されるが,背後には連続量を仮定する[21].つまり,「ある区画で連続している強弱の度合いを一定の間隔で区切り,カテゴリ化してデータを収集」した際は,ポリコリックまたはポリシリアル相関係数の方がより正確な計測が可能となる[21].前者は順序尺度と順序尺度,後者は順序尺度と連続尺度の相関係数を指し[21, 22],カテゴリカル因子分析は,こうした順序尺度のデータから背後にある連続的な心理特性(因子)を推定する方法である.

4  結果と考察

4.1  回答データの記述統計

4.1.1  A)授業の位置づけ

科目区分

必修科目が193名(51.33%)と最も多く,選択科目97名(25.80%),学部・学科・コースの推奨科目86名(22.87%)がそれに続いた.

授業方法

講義が332名(88.30%)と全体の9割近くを占め,ゼミナール21名(5.59%),ゼミナール以外の演習18名(4.79%),実験4名(1.06%),実習(教育実習,看護実習など)1名(0.27%)がそれに続いた.

4.1.2  B)学生の基本特性

性別

未回答1名を除く375名について,男性101名(26.93%),女性268名(71.47%),その他6名(1.60%)であった.

学年

1年生62名(16.49%),2年生95名(25.27%),3年生92名(24.47%),4年生117名(31.12%),その他(5年生以上,科目等履修生など)10名(2.66%)であった.

大学区分

国立大学103名(27.39%),公立大学20名(5.32%),私立大学253名(67.29%)であった.

専攻

人文科学69名(18.35%),社会科学102名(27.13%),理学32名(8.51%),工学45名(11.97%),農学13名(3.46%),保健25名(6.65%),教育25名(6.65%),芸術12名(3.19%),その他(医学,薬学,看護学など)53名(14.10%)であった.

片道の通学時間

30分未満126名(33.51%),30分以上1時間未満105名(27.93%),1時間以上1時間半未満86名(22.87%),1時間半以上59名(15.69%)であった.

4.1.3  C)学生の受講姿勢

変数を構成するために,重み付き最小二乗法によるカテゴリカル因子分析を行い,因子間の相関を認めるプロマックス回転(斜交回転)を施して因子を解釈した.まず,初期の共通性について0.1以下の項目がないことを確認した.そして,スクリーテスト(相関行列の固有値を降順に並べたスクリープロットに最下位固有値から傾向線を引き,そこから離れる固有値の順位を確認する方法))と対角SMC平行分析(乱数データの相関行列の固有値と実データのそれとを比較する際,相関行列の対角項にSMC(Squared Multiple Correlation:重相関係数の平方)を用いる方法)を参考に因子数を決定した[23]

学習への取り組み方

各因子の解釈ならびに因子名については,[15]に倣った.ただし,分析に用いた項目数が少ないこと,5件法ではなく4件法で測定したことなどから,異なる因子構造が得られた.そのため,第1因子は[15]の第2因子と第1因子を合わせる形で解釈した.

表1より,第1因子は「授業中に,これまで理解してきた内容を確認する」「授業の内容に興味がなくなってきても,自分を奮い立たせて話を聞く」などの項目に対する因子負荷量が高かったことから,「認知・努力調整方略」とした.第2因子は,「学習するとき,学習時間を決めて取り組む」などの項目に対する因子負荷量が高かったことから,「行動調整方略」とした.第3因子は,「物事がうまくいかなかったとき,心配しなくていいと自分自身に言う」「物事がうまくいくかどうか不安に感じたとき,大丈夫だと自分自身に言う」などの項目に対する因子負荷量が高かったことから,「感情調整方略」とした.

表1 学習への取り組み方に関する因子分析の結果

n = 376 F1 F2 F3
F1 認知・努力調整方略(10項目)
授業中に,これまで理解してきた内容を確認する .91 -.11 -.01
授業中に内容を十分に理解できなかったとき,後で理解しなおす .84 -.08 -.01
授業で理解すべき内容を考える .80 -.05 .07
授業の内容に興味がなくなってきても,自分を奮い立たせて話を聞く .80 .15 -.13
授業の内容に興味がなくても,内容を理解するように努力する .75 -.04 .16
授業で与えられた課題によって取り組み方を考え直 .75 -.05 .07
授業中に退屈したとき,頑張って集中する .74 .12 -.06
授業中に思考がぼんやりし始めたとき,集中するよう努力する .74 .09 .03
授業で与えられた課題に興味がなくなったとき,集中するよう努力する .70 .20 -.05
興味がない授業でも,やる気を持って受ける .64 .23 -.08
試験の前には計画を立てて学習する .34 .31 .15
F2 行動調整方略(3項目)
学習するとき,学習時間を決めて取り組む -.01 .94 -.01
時間を決めて学習課題に取り組む .14 .74 .07
一週間の学習の予定を立てて行動する .25 .48 .10
F3 感情調整方略(5項目)
物事がうまくいかなかったとき,心配しなくていいと自分自身に言う .11 -.13 .91
物事がうまくいくかどうか不安に感じたとき,大丈夫だと自分自身に言う .15 -.15 .91
事態の悪化を考えすぎないようにする -.20 .22 .74
自分が考えていたより物事が悪くなりそうでも,心配しすぎないようにする -.11 .28 .70
因子寄与 9.01 6.78 6.05
因子間相関 F1 .68 .57
F2 .55

太字の数字はプロマックス回転後の因子負荷量が.40以上であることを示す

授業の受講動機

各因子の解釈ならびに因子名については,[16]に倣った.表2より,第1因子は「サークル等が提供している授業情報で評判がよかったから」「先輩に勧められたから」などの項目に対する因子負荷量が高かったことから,「周囲からの影響」とした.第2因子は,「もともとその授業内容に関心があったから」「シラバスを読んで興味を持ったから」などの項目に対する因子負荷量が高かったことから,「自律的選択」とした.第3因子は,「授業の負担が大きくなさそうだから」などの項目に対する因子負荷量が高かったことから,「単位取得の容易さ」とした.

表2 授業の受講動機に関する因子分析の結果

n = 376 F1 F2 F3
F1 周囲からの影響(6項目)
サークル等が提供している授業情報で評判がよかったから .91 -.10 .00
先輩に勧められたから .87 -.04 .05
学部・学科のガイダンスなどで勧められたから .85 .06 -.12
Webサイトで授業の評判がよかったから .70 -.04 .21
友だちが取っているから .53 .00 .26
多くの人がその授業をとっているから .47 .12 .21
F2 自律的選択(7項目)
もともとその授業内容に関心があったから -.30 .91 .08
シラバスを読んで興味を持ったから -.23 .84 .26
今後役に立ちそうな内容だったから .13 .84 -.21
自分に必要な力が身につくと思ったから .23 .82 -.28
幅広い知識を身につけたかったから .11 .77 -.05
授業のタイトルがおもしろそうだったから .04 .68 .18
授業のやり方がおもしろそうだったから .34 .47 .15
F3 単位取得の容易さ(3項目)
授業の負担が大きくなさそうだから .05 .00 .87
楽に単位が取れそうだから .09 -.12 .85
授業内容がやさしそうだから .12 .07 .75
因子寄与 5.87 5.49 4.89
因子間相関 F1 .44 .59
F2 .39

太字の数字はプロマックス回転後の因子負荷量が.40以上であることを示す

オンライン受講の理由

表3より,第1因子は「授業中に教員に質問しやすい」「授業中に他の受講生とコミュニケーションをとりやすい」などの項目に対する因子負荷量が高かったことから,「学習環境のよさ」とした.第2因子は,「通学時間がかからない」「教室移動をしなくてよい」などの項目に対する因子負荷量が高かったことから,「負荷の軽減」とした.

表3 オンライン受講の理由に関する因子分析の結果

n = 376 F1 F2
F1 学習環境のよさ(6項目)
授業中に教員に質問しやすい .83 -.01
授業中に他の受講生とコミュニケーションをとりやすい .80 -.11
ノートを取りやすい .76 -.06
教室内の私語が聞こえない .72 -.05
授業に集中できる .64 .16
インターネットで授業に関連することを調べやすい .57 .17
F2 負荷の軽減(5項目)
通学時間がかからない -.26 .78
教室移動をしなくてよい .08 .61
新型コロナウイルス感染症の感染リスクを下げられる .07 .57
天気が悪い日に外に出なくてよい .07 .49
オンライン受講に慣れている .31 .41
因子寄与 3.71 2.47
因子間相関 F1 .44

太字の数字はプロマックス回転後の因子負荷量が.40以上であることを示す

4.1.4  受講パターン

「常に対面参加を選んだ」を対面受講,「オンライン参加よりも対面参加を多く選んだ」「対面参加とオンライン参加を同程度で選んだ」「対面参加よりもオンライン参加を多く選んだ」を併せて(対面とオンラインの)混合受講,「常にオンライン参加を選んだ」をオンライン受講として扱う.対面受講は43名(11.44%),混合受講は259名(68.88%),オンライン受講は74名(19.68%)であった.

4.2  受講パターンに関する判別分析

A)授業の位置づけ,B)学生の基本特性,C)学生の受講姿勢について,受講パターンとのポリコリックまたはポリシリアル相関係数が大きいものは,判別に有効な説明変数であると判断し,判別式に取り入れた.モデル全体とオンライン受講の正解率を基準に,判別精度の改善がみられるうちは説明変数の追加を繰り返した,最終的に,A)は科目区分(必修科目ダミー)と授業方法(講義ダミー),B)は性別(女性ダミー),学年(1年生ダミー),片道の通学時間(30分未満ダミー),C)は学習への取り組み方,授業の受講動機,オンライン受講の理由に関する因子得点を用いた(表4参照).

表4 受講パターンに関する判別分析の結果

変数名(n = 375) 判別係数 標準係数 F p
切片 -7.14
A)科目区分(必修科目ダミー) 1.68 .08 1.39 .25
授業方法(講義ダミー) 9.27 .09 1.45 .24
B)性別(女性ダミー) 4.16 .07 1.11 .33
学年(1年生ダミー) 1.46 .15 4.73 .01*
片道の通学時間(30分未満ダミー) 1.34 .14 3.78 .02*
C)学習への取り組み方
認知・努力調整方略 -0.37 .16 1.83 .16
行動調整方略 -0.20 .17 2.21 .11
感情調整方略 0.57 .17 3.35 .04*
授業の受講動機
周囲からの影響 -0.11 .02 0.03 .97
自律的選択 -0.38 .06 0.49 .61
単位取得の容易さ 0.14 .06 0.40 .67
オンライン受講の理由
学習環境のよさ 0.42 .11 1.63 .20
負荷の軽減 0.31 .26 9.71 .00**

** p < .01, * p < .05

表中の数値は,オンライン受講の結果を表す

性別(回答任意)について未回答だった1名を除く375名の回答データに対して判別分析を行った結果,計13の説明変数による本モデルは,受講パターン(対面受講・混合受講・オンライン受講)を有意に説明することが示された(Wilksのλ = 0.84,χ2(26) = 64.95,p = .00).判別分析の精度を表す正解率は,オンライン受講に関して62.2%となった.オンライン受講について有意な正の判別係数が得られたのは,効果量の目安として解釈可能な標準係数の大きい順に,オンライン受講の理由としての負荷の軽減,学習への取り組みとしての感情調整方略,学年(1年生ダミー),片道の通学時間(30分未満ダミー)であった.すなわち,同期型ハイブリッド授業におけるオンライン受講の選択に寄与したのは,以下の要因だということが示唆された.

・ 通学や教室移動にかかる時間,感染リスクなどの負荷を軽減したいという理由

・ 学習に取り組む際,物事がうまくいかない状況(例.オンライン受講に伴うパソコンやインターネットのトラブル)を不安に感じたり心配し過ぎたりしない方略

・ 学年が1年生であること

・ 片道の通学時間が30分未満であること

一方で,学習への取り組み方としての認知・努力調整方略,授業の受講動機としての自律的選択に関する判別係数は有意でなかった.すなわち,授業の内容を理解しようと努力したり,興味や関心を持って受講したりするといった学習意欲の高低が,オンライン受講の選択にかかわるという結果は得られていない.ゆえに,1.2に前述した「対面に比べてオンラインの方が真剣に学習しないという大方の予想」については,引き続きの検討を要する.

5  むすび

本研究では,「同期型ハイブリッド授業における受講方法の選択(受講パターン)に何が影響を与えているのか」というリサーチクエスチョンを立て,A)授業の位置づけ,B)学生の基本特性,C)学生の受講姿勢と,オンライン受講との関係を明らかにした.

分析には,同期型ハイブリッド授業の受講経験があり,受講方法を一部もしくはすべての回で自由に選ぶことができた376名の回答データを用いた.4.1で述べた通り,A)授業の位置づけは必修科目が約5割で,講義が全体の9割近くを占めていた.B)学生の基本特定については,女性が7割と男性よりも多く,学年,大学区分,専攻,片道の通学時間は,該当者のいない選択肢がなかった.C)学生の受講姿勢に関して,学習への取り組み方は「認知・努力調整方略」「行動調整方略」「感情調整方略」の3因子,授業受講動機は「周囲からの影響」「自律的選択」「単位取得の容易さ」の3因子から構成され,概ね先行研究に従う結果となった.オンライン受講の理由については,教員や受講生とのやり取りのしやすさに代表される「学習環境のよさ」と,通学や教室移動といった「負荷の軽減」の2因子が推定され,両者の相関関係は中程度であった.

受講パターンは,対面参加とオンライン参加を同程度,もしくはいずれかを多く選んだ混合受講が約7割,次いでオンライン受講が約2割,対面受講が約1割となった.4.2に詳述した計13変数を説明変数,受講パターンを目的変数とするモデルを組み立て,判別分析を行った.その結果,同期型ハイブリッド授業におけるオンライン受講の選択には,負荷を軽減したいという理由,トラブルが起こりうる状況で不安や心配をコントロールする取り組み方,1年生であること,片道の通学時間が30分未満であることが影響したと示された.

1つ目の要因に関して,外出せず自宅から授業に参加できるオンライン受講のメリットは,多くの人が納得するところであろう.2つ目のストレス場面での感情調整についても,ネットワークの不具合などを深刻に考えすぎる学生が対面受講を,そうではない学生がオンライン受講を選ぶ傾向は,自然な行動だと受け止められる.3つ目と4つ目の解釈は難しいが,変数間のポリコリック相関係数を踏まえると,1年生は必修科目が多いため移動時間が負荷になりやすく,コロナ禍に高校や塾でオンライン授業を経験しており耐性もついている,通学時間が短い学生は1人暮らしの場合が多く,家族に気を遣う必要がないなど,オンライン受講を後押しする要素がいくつかあるといえよう.

4.2で論じたように,本研究では,学習意欲にかかわる変数が受講パターンに影響を与えるという結果は確認されなかった.すなわち,学習意欲の低い学生がオンライン受講を選ぶ,オンライン受講を続けているうちに学習意欲が下がるといった懸念を裏づける示唆は得られていない.ただし,同期型ハイブリッド授業における受講方法の選択には,学生が所属する学部のカリキュラムや履修している他科目の特徴,本調査で回答した科目の前後の状況(例.3限は同期型ハイブリッド授業だが2限は対面授業のため,オンライン受講しづらい)など,ほかにもさまざまな要因が関係しうる.できる限り説明変数を精選し,シンプルな判別分析モデルの構築を目指した本研究の限界であり,検証すべき課題として受け止めるとともに,オンライン受講を選ぶ学生の特徴について分析を加えていきたい.

謝辞

本研究は,JSPS科研費21H00897,24K00455の助成を受けた研究の一部である.オンライン調査にご協力くださった方々に深謝する.

1)  本論文は,以下を改稿し,新たに結果と考察を追記したものである.

伏木田 稚子,大浦 弘樹,光永 文彦,吉川 遼,加藤 浩:ハイブリッド授業におけるオンライン受講の選択要因,日本教育工学会2024年春季全国大会論文集,pp. 613–614, 2024.

参考文献
 
© 2025 学術情報処理研究編集委員会

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