学術情報処理研究
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Print ISSN : 1343-2915
原著論文
ドメイン分析を応用した日本語研究ツールの教育用ソフトウェアヘの適用研究
-形態素解析ツールにおける開発事例-
佐野 洋
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2000 年 4 巻 1 号 p. 45-54

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抄録

コンピュータを使った言語研究の進展に伴って,主に大学を中心に言語研究用ソフトウェアの公開が行われている.例えば,[1]のサイトには,20の言語研究分野,170のソフトウェアツールがリンクされている.無償提供のソフトウェアを含めて,言語研究以外の目的にも使われており,応用利用も盛んである.言語研究の成果だけでなく,研究過程で使われたソフトウェアの語学教育への適用を進めることで学習支援を実現できる.しかし,(i)アプリケーションの最適設計には,適用分野の専門知識が必要なこと,(ii)ユーザー・インタフェースの設計にはユーザーモデリング技術が必要なこと,(iii)情報通信技術の発達が急で言語研究者自身の情報技術の学習負担が大きいこと等の理由から,言語研究者の開発するソフトウェアツールは,必ずしも教育や学習に適したソフトウェアとなっていない.ソフトウェアの再利用技術やモデリング技術,視覚化の戦略技術などソフトウェア適用のための方法論が利用されていない.本稿は,日本語研究ツールの教育用ソフトウェアヘの適用工程を効率化する方法と,適用事例ついて述べる.筆者は,オプジェクト指向ドメイン分析技術[2,3,4]を使って,日本語研究用ツール(IFS日本語形態素解析ツール)[5]を改変し,教育用ソフトウェアに適用開発した.教育利用の視点で(1)アプリケーションの適用分野のドメイン分析とソフトウェアのモデル化を行い,(2)形態素解析ツールの機能分解を実施してインタフェース設計に適用したところ,ツールの基本機能を研究上の視点から語学教育上の視点に容易に変更することが可能となった.システマティックな手続きで,教育用ソフトウェアのビュ一部分の改変が実現したことから,実装にかかる開発工期を短縮することができた.形態素解析ツールを利用して開発した教育用ソフトウェアWinMorphは,分析能力をその利用目的に応じてカスタマイズすることができ,例えば,日本語学習者の作文教育に利用することができる.

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© 2000 学術情報処理研究編集委員会
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