コミュニティ政策
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寄稿論文
アメリカにおける「ネイバーフッドカウンシル」の構築
―市民の公共参加をめざす新しいコミュニティ自治組織―
前山 総一郎
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2006 年 4 巻 p. 65-101

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抄録

欧米先進諸国同様、日本の地域住民社会と自治会は、「ローカルガバメントからローカルガバナンスへ」のシフトというドラスティックな事態に直面し、変動に迫られている。近年のローカルガバナンスについての欧米諸国比較研究 (B. Denters & L. E. Rose 2005) によれば、ローカルガバナンスにむけて市民の意向を効率的に吸収するための主要な手法として、現在、地区コミュニティ住民代表の選挙方式、諸セクター間のラウンドテーブル、市民アドバイザーリーボードといった手法が各国で採用される動向にある。本稿はそれを踏まえ、コミュニティ組織が如何に、地区コミュニティの公共についての意思形成にコミットするのかという根本的観点から以下のことに取り組んだ。
まずもって、全米主要都市(デイトン市、ピッツバーグ市、タコマ市等)で、市により条例等で公式認知されたコミュニティ自治組織「ネイバーフッドカウンシル」が、1980年代より(1)目的、(2)組織化 (構造)、(3)市からのサポート、(4)意思決定プロセスの四つの点で、ローカルガバナンスを担う有力な仕組みとして官民協業で構築されてきたことを検証した。そしてそれに基づいて全米先進事例としてシアトル市の実施事例をそのガバニングストラクチャーにつき分析することを通じて、同市において(1)条例によるオーソライズ・市民選挙による代表選出を核的特質とする「ネイバーフッドカウンシル」 (地区レベル・全市レベルの二層) の形成、(2)地区住民による地区プランニング (住民計画) とその、市総合計画 (行政計画) 反映の保証する仕組み (ネイバーフッド計画)、という二相の連結により、各地区コミュニティの市民が審議と計画策定を通じて自らの地域コミュニティにかかわる公共的な意思決定に直接的にコミットするための、現実的なシステムが構築されたことを示した。
日本にあっての、上越市など地域自治構築等あらたな住民自治構築にあって、今後コミュニティベースでの意思形成への動きは、如上の世界的視野からさらに検討される必要がいっそうあろう。

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