2021 年 7 巻 p. 57-82
執政制度の形式的側面(執政府・立法府関係)は民主主義体制だけでなく権威主義体制においても重要である。しかし、これまで権威主義体制を分類するときには実態的側面(支配エリートの組織的基盤)のみが重視される傾向にあった。本稿では、体制横断的に形式的側面を捉えるためのデータセットとして「憲法の明示的規定に基づく執政府・立法府関係」(CELR)を提示する。まず、各データの趣旨として、政治制度の設計と運用に基づく政治体制、実効性の有無と執政府の二元性に基づく執政府・立法府関係の分類枠組み、権限行使の経路の違いに基づく各アクターの憲法的権限を順次説明する。次に、CELRの応用方法を主に3つ提案する。すなわち、複数の類型の統合に伴う事例群の拡大、特定の権限の追加に伴う事例群の絞り込み、CELRの憲法的権限とV-Demの慣例的権力のデータの併用に伴う権限行使の形式と実態の乖離の識別、である。最後に、CELRの対象範囲の拡張可能性を指摘して議論を締め括る。