抄録
症例は57歳, 男性.2004年3月に左季肋部痛を認め, 胸部CTにて前縦隔腫瘍を指摘された.同18日, 胸腔鏡下に胸腺腫瘍および胸腺切除術を施行した.術中病理検査にて胸腺癌の疑いがあり, 胸骨縦切開にて縦隔リンパ節郭清を施行した.最終的には, 非定型胸腺カルチノイドであり, リンパ節への転移は認めず, 周囲組織への浸潤を認めるとの病理結果であった.術後, 縦隔へ放射線治療を施行した.経過中, 高カルシウム血症を認め, 精査にて, 副甲状腺腫瘍・副甲状腺機能亢進症を指摘された.同10月8日, 副甲状腺腫瘍切除術を施行, 腺腫との診断を得た.本症例は, 非定型胸腺カルチノイドである点, 多発性内分泌腺腫症(Multiple Endocrine Neoplasm)の可能性がある点において, 厳重な経過観察が必要である.