抄録
同時性両側肺門部扁平上皮癌に対する,2期的両側スリーブ肺葉切除を経験した.症例は63歳男性で,血痰を主訴とし,胸部レントゲン写真で左下肺野の浸潤影を認めた.気管支鏡検査で左下葉気管支をほぼ閉塞する腫瘍と,右上葉枝入口部に,粘膜の不整を認めた.左右とも扁平上皮癌であった.左下葉スリーブ切除術を先行した.左側術後29日目の気管支鏡検査で,右上葉枝の病変は粘膜下への浸潤ありと判断された.左側術後33日目に,右上葉スリーブ切除術を行った.両側とも,有茎肋間筋による吻合部の被覆を行った.右側手術時の術中換気は,左残存肺のジェット換気,右残存肺の術野換気を併用した.術後病期は両側ともIB期であった.術後3年目の現在,腫瘍再発は認めず,通常の社会生活を送っている.両側肺癌に対する,両側スリーブ肺葉切除術は選択可能な治療法である.