2006 年 20 巻 4 号 p. 686-693
最近10年間に当センターで手術施行した転移性肺腫瘍は全59例で,胃癌からの転移はわずかに2例であった.消化器癌のうち,大腸癌からの転移に対する切除例は多く術後成績も良好であるのに対し,胃癌からの転移は癌性リンパ管症や癌性胸膜炎の形をとることが多いため外科治療の適応となりにくく治療成績も不良である.今回経験した胃癌からの肺転移症例について,文献的な考察を加えて報告した.症例1:76歳,男性.胃癌の診断で胃全摘術施行.2年後の胸部X線で結節影がみられ,胸部CTで左S10に腫瘤状陰影を認めた.腫瘤の増大がみられたため,原発性肺癌を疑い左下葉切除術施行.病理組織検査にて胃癌からの転移と考えられた.症例2:82歳,男性.胃癌の診断で幽門側胃切除術施行.2年後の腹部CTにて左肺に異常陰影を指摘され,原発性肺癌を疑い手術施行.病理組織検査で胃癌の肺転移と診断された.