日本呼吸器外科学会雑誌
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症例
肺移植術中のガーゼ大量使用にて血清(1→3)-β-D-グルカン測定値の異常高値を示した1例
大石 久星川 康岡田 克典佐渡 哲鈴木 聡松村 輔二近藤 丘
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2006 年 20 巻 5 号 p. 768-772

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抄録

血清(1→3)-β-D-グルカン値の測定による深在性真菌症の血清学的診断は,広く利用されているが,その測定値は真菌症以外の種々の因子による影響を受け,偽陽性を示すことがある.我々は肺リンパ脈管筋腫症の患者に対し,脳死両側肺移植術を施行した.術翌日の血清(1→3)-β-D-グルカン値は2964 pg/mlと異常高値を示した.原因を検討した結果,術中の人工心肺中のポンプ吸引使用により,ガーゼに浸み込んだ血液が体内へ送血されたことが原因である可能性が疑われた.それを踏まえ,我々は生理食塩水とガーゼを使用した(1→3)-β-D-グルカン値の実験的測定を行ったところ,ガーゼから生理食塩水への(1→3)-β-D-グルカン成分の溶出を示唆する結果を得た.ガーゼの大量使用,および人工心肺中にポンプ吸引を行った症例では血清(1→3)-β-D-グルカン値の異常高値を示す可能性があり,注意を要すると考えられた.

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