日本呼吸器外科学会雑誌
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原著
胸腔鏡手術における術中トラブルと対策
森山 重治名和 清人村岡 孝幸
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2006 年 20 巻 7 号 p. 888-892

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抄録

胸腔鏡手術834例の術中トラブル25例を分析した.術中トラブルの原因は25例中,術者の要因が17例と最も多く,次いで自動縫合器の不具合が4例と多かったが,その中には器具の選択の誤りも含まれ,これを含めると術者の要因が84%を占めていた.しかし,これらは『胸腔鏡手術のハンディキャップ』に起因するものが大部分であった.開胸移行はTS 416例中4例(1.0%),VATS 418例中3例(0.7%)であった.致死的な血管損傷を2例経験したが,小開胸を置いていたため即時に直視下に圧迫止血し,開胸移行して無事修復できた.血管処理を伴う解剖学的肺切除を行うときは,極めてまれではあるが致死的な血管損傷があるため,小開胸を置くことを推奨する.当科では術中トラブルによる術死,在院死は経験していない.胸腔鏡手術に限らず,鏡視下手術のリスクマネージメントには,トラブル報告システムを構築してデータベース化し,情報を共有することが必須と考える.

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