抄録
4歳の女性.突然の左頸部の疼痛,腫脹を主訴に来院し,頸部エコーにて左総頸静脈の血流鬱滞,拡張を認めた.胸部CTで上前縦隔に腫瘤性病変,周囲の軟部組織の肥厚および両側の胸水貯留を認め,胸部MRIで左腕頭静脈に血栓を認めた.悪性縦隔腫瘍を疑い胸腔鏡下生検を行ったが確定診断に至らなかった.胸骨正中切開下に手術を施行した.左腕頭静脈の上大静脈への血流を一時遮断して,腫瘍を摘出し,続いて左腕頭静脈を切開して赤色血栓を摘出した.腫瘍周囲に著しい炎症を伴っており縦隔炎を併発したものと考えられた.病理学的に成熟奇形腫と診断された.検索しえた限りでは腫瘍穿破による縦隔炎および血栓性静脈炎を合併した成熟奇形腫の報告はない.