2008 年 22 巻 2 号 p. 180-185
9歳男児,交通外傷によりJCS200で当院へ救急搬送された.搬入時,前胸部から頚部にかけ広範囲にわたり皮下気腫を認め,血液ガス分析ではpCO2 124.0torr,pO2 61.5torrであった.胸部CT上,気管分岐直後の右主気管支の連続性が追えず,右主気管支断裂を疑った.重度の呼吸不全を伴っていたため人工肺(ECMO)下での緊急手術を行った.右後側方開胸で確認すると,右主気管支の完全断裂を認めた.端々吻合を行ったが,他に中枢側に気管分岐部損傷を認めた.術中に酸素化能の低下を認め,手術継続は不可能と判断した.初回術後2日目に胸骨正中切開によるアプローチで損傷部の気管形成を行い44日目に歩行退院となった.重度の呼吸不全を伴った小児気管支断裂症例に対し,CTでの診断からECMO下での2度の手術まで,迅速かつ集学的な治療により救命可能であった.