抄録
57歳,男性.主訴は発熱.繰り返す肺炎の既往あり.肺炎と診断され抗生物質の投与を受けたが胸部X線上異常陰影は消失しなかった.胸部CT上左肺下葉には最大径6cmの腫瘤影と下行大動脈より分岐し腫瘤影へ注ぐ異常血管が認められた.大動脈造影検査では大動脈より肺底区へ流入する拡張した異常血管がみられたが,還流静脈を同定することは出来なかった.以上の検査結果より肺底動脈体動脈起始症と診断し手術を施行した.手術所見では正常肺と異常肺の境界が不明瞭なため,胸部下行大動脈より左肺下葉へ流入している異常動脈を切離し左肺下葉切除術を行った.切除標本の所見は肺内で約6cmまで拡大し血栓を伴った異常血管が左肺底区へ流入していた.繰り返す肺炎や改善しない胸部異常陰影がある症例では本疾患の可能性も考慮した精査と診断がつけば検査結果を考慮した術式での手術が必要と考えられた.