抄録
目的:悪性腹膜中皮腫の臨床像を胸膜中皮腫と比較し明らかにする.対象:1993~2009年3月までに診断・治療した悪性腹膜中皮腫12例と胸膜中皮腫96例を対象とした.結果:悪性腹膜中皮腫は,胸膜中皮腫と比較して,女性の比率が高く,上皮型が多く,治療は化学療法が中心であった.職業歴,石綿肺や胸膜プラークの合併より石綿ばく露の強い関与が窺われ,胸膜中皮腫と比較しても,短期間に高濃度のばく露例が多かった.予後は,悪性腹膜中皮腫および胸膜中皮腫の生存期間中央値は12.0ヵ月であり,同等に予後不良の疾患であった.結語:悪性腹膜中皮腫は女性が多く,上皮型が主であった.石綿ばく露が強く関与しており,石綿ばく露歴,腹水貯留がある場合には鑑別疾患のひとつと考えられた.治療に関しては,解剖学的に根治手術は困難であり,各種治療法の組み合わせによる,治療法の確立を急ぐ必要があると考えられた.