抄録
74才男性.2007年9月に直腸癌に対し腹会陰式直腸切断術施行.全身精査目的に施行した胸部CTにて右肺上葉S2に径10mmの小結節影を認めた.気管支鏡下に行った擦過細胞診の結果はClass IVで,直腸癌肺転移もしくは原発性肺癌が疑われ手術目的に当科紹介入院となった.2007年12月に胸腔鏡補助下右肺上葉切除術+リンパ節郭清術を行った.病理組織学的には高度のリンパ球・形質細胞浸潤を伴う大型異型細胞の充実性増殖を認めており,リンパ上皮腫様癌の診断となった.EBVとの関連は腫瘍組織のin situ hybridizationを行ったが陰性で,EBV感染の関与は否定的であった.術後1年6ヵ月経過し無再発にて生存している.リンパ上皮腫様癌は本邦での報告例は少なく,稀な疾患であると考えられたので,若干の文献的考察を加えて報告した.