抄録
症例は26歳男性,右季肋部鈍痛を主訴に近医を受診し,右下肺野に腫瘤影を指摘され当院紹介となった.1年前の胸部X線写真では同腫瘤影は明らかではなく,心横隔膜角の直下に淡い斑状影が疑われたのみであった.胸部CTでは右横隔膜上に嚢胞状腫瘤を認め,腫瘤の栄養血管が腹腔動脈から分岐していた.大動脈造影では腹腔動脈から分枝し腫瘤に流入する異常動脈を認め,静脈相では下肺静脈に流入していた.肺分画症と診断し,右肺下葉切除を施行した.異常動脈は肺靱帯に含まれておりstaplerで切離した.嚢胞部分は一層の気管支上皮に裏打ちされ,内部に多量の凝血塊を含んでおり,出血により著明に拡張した分画肺の気管支腔と考えられた.肺葉内肺分画症では,感染症状を伴わず,出血による急速な増大や,さらには破綻による血胸や出血性ショックを呈することがあるため,診断に留意する必要がある.