抄録
手術支援ロボットダヴィンチSサージカルシステムは,より複雑で細やかな手術操作を可能とし,3次元による正確な画像情報を取得できるため,より安全かつ侵襲の少ない手術を可能とするかもしれない.我々は肺癌症例に対し,このダヴィンチSサージカルシステムを使用し,肺葉切除+縦隔リンパ節郭清を行った.症例は56歳女性.右上葉肺腺癌cT1bN0N0 stage IAに対し,右上葉切除+縦隔リンパ節郭清を施行した.剥離操作はすべてダヴィンチシステム下に行い,術野展開,吸引操作とステープリングは助手が行った.手術時間は6時間48分,出血量は234gであった.多関節を有する器具は自由度が高く,胸腔内における剥離操作をより自然なものにする.これは,通常のVATSにおける直線的な器具での操作と比較して大きな利点であった.ダヴィンチシステムによるロボット支援は,今後のさらなるシステムの改良と相まって,これまで技術的に困難と考えられていた手術を可能とするかもしれない.