抄録
症例は71歳男性.主訴は左肩痛.悪性リンパ腫にて化学療法を施行予定であったが,左肺真菌症と診断されたため,2007年3月に当科紹介となり,後側方開胸下に左肺上葉切除術を施行した.その際,胸腔内に高度の癒着を認めたため第4肋骨を背側で切離,第5肋骨は切除した.胸壁欠損部は肩甲骨で十分に覆われており再建しなかった.術直後の呼吸状態が不安定なため,2日間の人工呼吸器管理を要した.鎮静解除後より左肩痛を自覚するためCTを施行したところ,胸壁欠損部より左肩甲骨が胸腔内に陥入していた.透視下の整復は困難なため,全身麻酔下に整復し胸壁再建を行った.術後経過は良好であり,その後,血液内科にて化学療法を施行された.肩甲骨の胸腔内陥入は稀な合併症であるが,術後人工呼吸器管理を要する場合は発生に注意が必要である.