日本呼吸器外科学会雑誌
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24 巻, 7 号
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原著
  • 青山 徹, 前原 孝光, 安藤 耕平, 益田 宗孝
    2010 年 24 巻 7 号 p. 0988-0992
    発行日: 2010/11/15
    公開日: 2011/04/27
    ジャーナル フリー
    両側自然気胸150例を対象とし,臨床経過と手術適応に関して検討を行った.両側自然気胸の頻度は18.0%(同時性1.0%,異時性17.0%)であった.年齢分布は,10~20歳代で全体の80%を占めた.異時両側気胸の発症間隔は,最短2日から最長32年,平均47.3ヵ月であった.年齢別では10歳代11.3ヵ月,20歳代35.7ヵ月,30歳代以上110.4ヵ月であった.当施設における両側自然気胸の治療方針は,異時気胸のうち初発側手術例では対側気胸は保存的治療を第一選択とし,初発側非手術例では対側気胸は手術を第一選択としている.同時気胸では一期的両側手術を行っている.治療経過は,異時両側気胸治療後は対側気胸の再発率が高く,初発側気胸で低かった.同時両側気胸治療後に再発した症例はなかった.治療に関して,異時両側気胸の治療は様々な見解があるが,今回の検討では対側気胸の治療のみで十分であると考えられた.
  •  
    木村 亨, 竹内 幸康, 船越 康信, 大瀬 尚子, 楠本 英則, 前田 元
    2010 年 24 巻 7 号 p. 0993-0998
    発行日: 2010/11/15
    公開日: 2011/04/27
    ジャーナル フリー
    肺癌切除術後の肺炎は時に重篤な経過をたどり治療に難渋する.術後肺炎の病態と管理方法を考察する目的で,2001~2009年の非小細胞肺癌に対する肺切除術836例中,術後肺炎23例(2.8%)を対象に臨床経過,画像所見,痰培養結果等につきretrospectiveに検討した.肺炎発症は術後6.8±3.4(Mean±SD)日目で,胸部X線の異常影は左肺全摘除術後1例と両側肺に認めた2例を除き,術側肺に認めた.肺炎発症時の胸部CT施行17例中13例(76.5%)で術側残存肺の尾側や背側に肺炎像を認めた.挿管・人工呼吸管理を要した9例(9/23,39.1%)中4例(4/23,17.4%)が死亡した.自己喀出痰提出12例中,病原微生物検出4例(33.3%),気管内採痰12例中,口腔内常在菌のみ4例(33.3%),培養陰性1例(8.3%),病原微生物検出7例(58.3%)であった.痰培養病原微生物検出例で重症化しやすい傾向があった.肺癌切除術後肺炎の要因に術後排痰不良と不顕性誤嚥が挙げられ,発症時の積極的な下気道検体採取が重要と考えられた.
  • 藤野 道夫, 山川 久美, 松井 由紀子, 岩田 剛和
    2010 年 24 巻 7 号 p. 0999-1003
    発行日: 2010/11/15
    公開日: 2011/04/27
    ジャーナル フリー
    自然気胸に対して自動縫合器を使用した胸腔鏡下肺部分切除術は標準的な術式になっているが,切除線近傍での嚢胞新生が再発の原因の一つと指摘されている.我々も自動縫合器による肺部分切除術によって再発率が高まった経験を踏まえて,嚢胞基部の肺実質を2重結紮する嚢胞結紮術を標準的な術式として採用してきた.1998年1月から2008年12月まで自然気胸に対し胸腔鏡手術を行った584例654側のうち,472例530側に嚢胞結紮術が行われた.すなわち嚢胞結紮術は全症例の81.0%に施行され,特に好発年齢の10~20代では91.7%に行われた.術後再発も5.8%であり,自動縫合器による肺部分切除術の17.8%より良好であった.嚢胞結紮術は手技が簡便なだけでなく,術後再発も明らかに少なく,また手術材料費も廉価であり,自然気胸に対する術式として有用と考える.
  • —縮小手術適応アルゴリズムの策定—
    井上 匡美, 南 正人, 澤端 章好, 門田 嘉久, 新谷 康, 中桐 伴行, 奥村 明之進
    2010 年 24 巻 7 号 p. 1004-1010
    発行日: 2010/11/15
    公開日: 2011/04/27
    ジャーナル フリー
    小型肺癌に対する縮小手術のコンセンサスは未だ不十分である.我々は小型肺癌に対する縮小手術の適応に関し,径2cm以下肺癌切除例168例を対象に,CT所見・腫瘍径・血清CEA値・胸膜浸潤を変数として後ろ向き解析を行いアルゴリズムを策定した.全症例の5年無再発生存率(5Y-DFS)は90.3%であった.GGO優位病変50例にはリンパ節転移や術後再発は認めず.充実性優位病変36例ではリンパ節転移を1例,再発を2例に認めた.充実性病変82例では,14例(17.1%)にリンパ節転移を認めCEA高値例に多い傾向であった.5Y-DFSは81.1%でCEA高値例と胸膜浸潤例に再発が多かった.小型肺癌において,GGO優位病変と1.5cm以下の充実性優位病変には区域切除を適応しうるが,充実性病変で1cmを超える場合は肺葉切除の適応であり,1cm以下でも縮小手術の適応は慎重を期すべきである.
症例
  • 吾妻 寛之, 宮澤 正久
    2010 年 24 巻 7 号 p. 1011-1014
    発行日: 2010/11/15
    公開日: 2011/04/27
    ジャーナル フリー
    症例は66歳,女性.胸部X線上,右下肺野に結節影を認め,増大傾向を示した.胸部CTでは右肺S8に境界明瞭な13mm大の結節影がみられ,PET陽性であった.悪性腫瘍を否定できず胸腔鏡下右下葉部分切除術を施行した.術後病理組織学的に18年前に手術を施行した副腎皮質癌の肺転移と診断された.本症例は副腎皮質癌切除後長期経過し肺転移を来した稀な症例であると考えられた.
  • 西井 竜彦, 村松 高, 四万村 三恵, 古市 基彦, 大森 一光, 塩野 元美
    2010 年 24 巻 7 号 p. 1015-1019
    発行日: 2010/11/15
    公開日: 2011/04/27
    ジャーナル フリー
    症例は,65歳の女性.健診の胸部X線検査で,縦隔の拡大を指摘され,当科紹介受診.胸部CT検査で,前縦隔に境界明瞭で内部不均一な45mm大の類円形腫瘤を認め,胸腺腫の疑いで手術(腫瘍摘除および胸腺全摘術・右肺部分切除術・左腕頭静脈形成術)施行.病理検査では,胸腺癌(扁平上皮癌)であった.左肺S6にも小結節影を認めていたが,本人の希望で経過観察とした.術後放射線療法を施行し,経過観察中,左肺S6の結節影の増大傾向を認めた.胸腺癌の肺転移,もしくは原発性肺癌と考えられ,手術施行.術中病理で腺癌の診断が得られ原発性肺癌と判断し,下葉切除術およびリンパ節郭清を施行した.術後6ヵ月の時点で再発は認めず,引き続き外来経過観察中である.本邦における胸腺癌と肺癌の重複癌の報告例は本症例が9例目であった.胸腺癌と肺癌の重複癌の報告はきわめて稀であり,報告した.
  • 清水 誠一, 藤崎 成至, 河内 雅年, 江藤 高陽, 西田 俊博
    2010 年 24 巻 7 号 p. 1020-1024
    発行日: 2010/11/15
    公開日: 2011/04/27
    ジャーナル フリー
    肺原発淡明細胞腺癌の報告は極めてまれである.今回,上縦隔までリンパ節転移を伴った淡明細胞腺癌の1例を胸腔鏡補助下に完全切除したので報告する.症例は69歳,女性.CTにて右肺S8に23mm大の結節を認め,PET-CTで結節,肺門および縦隔リンパ節に集積を指摘された.術前診断はcT1bN2M0 Stage III Aの右下葉肺癌で,胸腔鏡補助下右下葉切除+ND2aをおこなった.組織学的所見では,病変の90%以上を淡明細胞が占め,上縦隔リンパ節を含めた19/23のリンパ節に転移を認めた.免疫組織学的にThyroid transcription factor-1(TTF-1)陽性であり,画像検査においても他の部位に腫瘍はなく,肺原発淡明細胞腺癌と診断した.術後病理診断はpT1aN2M0 Stage III Aであったため,術後はシスプラチン(CDDP)とビノレルビン(VNR)施行後,テガフール・ウラシル(UFT)内服に変更し補助化学療法を継続している.
  • 高橋 剛史, 村川 知弘, 坂本 未紀, 佐野 厚, 深見 武史, 中島 淳
    2010 年 24 巻 7 号 p. 1025-1031
    発行日: 2010/11/15
    公開日: 2011/04/27
    ジャーナル フリー
    胸腔内結石の報告例は我々が調べた限りでは26例と比較的稀な疾患である.特有の症状はなく,画像所見のみでは診断が困難な症例がある.今回,我々は転移性肺腫瘍との鑑別が困難であり,胸腔鏡下手術が診断に有用であった胸腔内結石の2例を経験したので報告する.両症例ともに胸部CTにて両側肺野に多発結節を指摘された.症例1は肝内胆管癌による,症例2は膵臓癌による転移性肺腫瘍が疑われた為に,診断目的に症例1は両側の結節に対して,症例2は右側の結節に対して胸腔鏡下手術を施行した.両症例ともに右側の結節の病理診断は胸腔内結石で,症例1の左側の結節は転移性肺腫瘍の診断であった.
  • 山科 明彦, 奥村 典仁, 高橋 守, 大畑 恵資, 松岡 智章, 亀山 耕太郎
    2010 年 24 巻 7 号 p. 1032-1036
    発行日: 2010/11/15
    公開日: 2011/04/27
    ジャーナル フリー
    症例は75歳男性.2008年3月下旬より左腰背部痛が出現し,当科へ紹介され,受診した.胸部CTで左第10肋骨を中心に,手拳大の胸壁腫瘍を認めた.腫瘍は第9~11肋骨および第9,10胸椎の椎体,椎弓,棘突起にも浸潤を認めた.胸壁原発の悪性腫瘍を疑い腫瘍生検を施行するも診断に至らず,短期間に明らかな増大傾向および脊柱管内への進展を認めたため,胸壁腫瘍切除および第9~11肋骨合併切除,第10,11胸椎合併切除,および左肺下葉部分合併切除術を行った.胸椎はインプラントで再建し,胸壁欠損部はMarlex®meshで再建した.術後免疫染色の結果,骨の孤立性形質細胞腫の診断となった.胸壁原発孤立性形質細胞腫はまれな疾患であり,文献的考察を加えて報告する.
  •  
    米谷 文雄, 中川 知己, 岩﨑 正之
    2010 年 24 巻 7 号 p. 1037-1040
    発行日: 2010/11/15
    公開日: 2011/04/27
    ジャーナル フリー
    症例は65歳の女性.乳癌術後10年目に前胸部の皮下腫瘤で再発した.胸部CT検査で右第3肋軟骨を中心に腫瘍が胸骨体に浸潤し,皮膚や胸腔内へと突出していた.化学療法を行ったが,腫瘍は急速に増大し自壊した.感染の合併により発熱し悪臭を放つようになり手術を決断した.腫瘍は8cm以上あり,ほぼ胸骨体全体が腫瘍で破壊された.手術は胸骨体切除,右第3,4,5肋骨切除,右肺部分切除を行い,欠損した皮膚軟部組織は,右内胸動静脈と左下腹壁動静脈とを血管吻合した有茎腹直筋皮弁により胸壁再建した.感染創のため異物を用いた再建は行わなかった.術後2年6ヵ月経過した現在再発を認めていない.骨性胸郭の再建を省略したが,呼吸機能は保たれ良好な結果を得たので報告する.
  • 文献報告133例の検討
    小林 哲, 苅部 陽子, 荒木 修, 千田 雅之, 三好 新一郎
    2010 年 24 巻 7 号 p. 1041-1045
    発行日: 2010/11/15
    公開日: 2011/04/27
    ジャーナル フリー
    症例は55歳女性.胸部圧迫感を自覚し人間ドックで胸部異常陰影を指摘され紹介となった.頚胸部CTでは気管を右方に圧排し,甲状腺左葉から気管分岐部近傍にまで至る8×5.5×3cmの嚢胞性腫瘤を認めた.中縦隔嚢腫と考え手術を施行した.嚢腫は周囲組織との癒着もなく頚部切開のみで完全切除し得た.病理組織像で副甲状腺嚢腫と診断した.嚢腫内容液中のPTH,intact-PTH,PTHrPは高値を示したが,血液中濃度は正常であった.縦隔副甲状腺嚢腫はこれまで学会抄録のみも含めて133例の報告を認め,非機能性腫瘍が59%,中縦隔内は23%であった.中縦隔副甲状腺嚢腫を頚部アプローチのみで切除している報告は稀であるが,中縦隔の比較的大きな薄壁嚢腫でも,局所症状が軽度の場合には周囲との癒着は疎と思われ,なかには頚部アプローチのみで完全切除が可能な症例もあると考えられた.
  • 西川 敏雄, 藤原 俊哉, 片岡 和彦, 松浦 求樹
    2010 年 24 巻 7 号 p. 1046-1049
    発行日: 2010/11/15
    公開日: 2011/04/27
    ジャーナル フリー
    症例は56歳,女性.2009年5月検診での胸部異常陰影にて近医を受診,CTにて前縦隔腫瘍を認めたため当科紹介となった.1年前の検診では異常は認めなかった.CTでは前縦隔に10×9cmの軽度造影効果を伴い内部不均一で脂肪成分を含む腫瘤を認めた.MRIでも同様に脂肪成分を含み内部不均一であった.肺動脈や心嚢との境界がやや不明瞭であったが炎症所見と考えた.1年前の検診では異常を認めておらず成長速度が速いこと,周囲との境界不明瞭な画像所見を呈していたことより悪性疾患である可能性も考えられたが,成熟奇形腫を疑い手術を施行した.胸骨縦切開にて腫瘍を摘出し迅速病理検査に提出したところ粘液性腫瘍とのことであった.摘出標本では11×10×9cmの腫瘤を認めた.術後病理検査では混合型脂肪肉腫との診断であった.脂肪成分を含む縦隔腫瘍を認めた場合には,脂肪肉腫も念頭において加療を行うことが重要であると考えられた.
  • 坂巻 靖, 城戸 哲夫, 塩野 裕之
    2010 年 24 巻 7 号 p. 1050-1054
    発行日: 2010/11/15
    公開日: 2011/04/27
    ジャーナル フリー
    症例は53歳女性.7歳時の胸部X線写真で前縦隔腫瘍を発見され奇形腫が疑われたが,手術を拒否し続けてきた.40歳頃から喀血をきたすようになり,最近の健診で血清CEA値上昇,腫瘍のPET陽性所見を認め当科へ紹介された.CTでは,最大径12cmで内部不均一な楕円球形の腫瘍が右肺を圧排する所見とともに,上葉の浸潤影と気管支拡張像,中葉の著明な虚脱を認めた.患者は喀血と癌合併の可能性を理由に最終的に手術を承諾した.手術で右肺上中葉を合併切除し腫瘍を摘出した.腫瘍は成熟嚢胞性奇形腫と診断された.術後経過は良好で血清CEA値は正常化し,喀血も消失した.前縦隔奇形腫は発見後比較的早期に摘出されるのが一般的で,本症例のように小児期から半世紀近くにわたって経過を追えた報告は稀である.
  • 岩田 輝男, 井上 政昭, 岩浪 崇嗣, 森山 裕之, 川口 誠, 安元 公正
    2010 年 24 巻 7 号 p. 1055-1059
    発行日: 2010/11/15
    公開日: 2011/04/27
    ジャーナル フリー
    胸水貯留にて発症し,診断に難渋したMycobacterium abscessusM. abscessus)肺感染症に対し手術にて根治できた一例を報告する.症例は58歳,男性.2007年7月,左胸痛,発熱,呼吸苦が出現し当院内科受診.胸部X線にて左胸水貯留が認められた.抗生剤投与するも左胸水の増加を認めたため,胸腔ドレナージ目的で呼吸器外科転科となった.左胸腔ドレナージ後も左肺下葉の拡張不良が持続し,慢性膿胸が疑われ胸膜剥皮術施行.しかし,拡張不良が持続するため何らかの器質的な病変の合併を疑い気管支鏡検査を施行.左肺底区支には多量の粘稠痰貯留を認め,DNA-DNA hybridization(DDH)法により,非結核性抗酸菌症の中で最も難治性のM. abscessusが証明された.左肺下葉に限局した病変であり,術前にクラリスロマイシン(CAM)を中心とする化学療法を6ヵ月間行い,2008年3月,左肺下葉切除術を施行し良好な術後経過を得た.
  • 富原 英生, 植田 真三久, 岡村 雅雄, 谷村 信宏, 村田 晃一
    2010 年 24 巻 7 号 p. 1060-1064
    発行日: 2010/11/15
    公開日: 2011/04/27
    ジャーナル フリー
    症例は65歳女性.労作時呼吸困難の増悪を主訴に当院を紹介となった.来院時,頚部に喘鳴が聴取され,胸部CT・MRIにて頚部気管内に内腔をほぼ閉塞する充実性腫瘤を認めた.気管支鏡検査では,声帯より約2.5cmの部位に弾性硬の粘膜下腫瘍を認め,ファイバーは通過しなかった.出血による気道閉塞の可能性を考慮し生検は行わず,外科的に切除する方針とした.手術は局所麻酔下(鎮静薬併用)にて気管切開を行い,気道確保した後に開始した.腫瘍は,第4気管輪に位置したため,術式は気管環状切除(第3~5気管軟骨輪),気管端々吻合とした.病理検査結果は悪性リンパ腫(MALTリンパ腫)であった.術後10年の経過で現在再発を認めていない.気管内に発生する悪性リンパ腫は極めて稀な疾患であり,文献的考察を加え報告する.
  • 坪島 顕司, 岸本 晃司, 織田 禎二
    2010 年 24 巻 7 号 p. 1065-1068
    発行日: 2010/11/15
    公開日: 2011/04/27
    ジャーナル フリー
    放射線治療後に発症する気胸は稀で,悪性リンパ腫の放射線治療後等に発症した症例の報告が散見されている.今回我々は乳癌に対する放射線治療後に発症した自然気胸の1例を経験したので報告する.症例は41歳の女性.2004年10月に右乳癌に対し乳房温存手術を施行され,再発予防目的で計60Gyの放射線治療,化学療法を施行された.2006年1月に外来通院中に施行した胸部CTで偶然右気胸を認め当科に紹介となった.肺の虚脱は軽度であり,外来経過観察としたが,肺虚脱が進行するため,当科入院し胸腔ドレナージを施行した.入院後もair leakが継続するため,入院7日目に胸腔鏡下に手術を施行した.明らかなブラは観察できなかったが,下葉に放射線治療の影響と思われる胸膜肥厚した部位とドレーン接触部に一致して裂創,air leakが確認できた.同部を縫縮し手術を終了した.術後経過は良好で現在まで気胸再発は認めていない.
  • 坪島 顕司, 岸本 晃司, 織田 禎二
    2010 年 24 巻 7 号 p. 1069-1072
    発行日: 2010/11/15
    公開日: 2011/04/27
    ジャーナル フリー
    症例は71歳男性.主訴は左肩痛.悪性リンパ腫にて化学療法を施行予定であったが,左肺真菌症と診断されたため,2007年3月に当科紹介となり,後側方開胸下に左肺上葉切除術を施行した.その際,胸腔内に高度の癒着を認めたため第4肋骨を背側で切離,第5肋骨は切除した.胸壁欠損部は肩甲骨で十分に覆われており再建しなかった.術直後の呼吸状態が不安定なため,2日間の人工呼吸器管理を要した.鎮静解除後より左肩痛を自覚するためCTを施行したところ,胸壁欠損部より左肩甲骨が胸腔内に陥入していた.透視下の整復は困難なため,全身麻酔下に整復し胸壁再建を行った.術後経過は良好であり,その後,血液内科にて化学療法を施行された.肩甲骨の胸腔内陥入は稀な合併症であるが,術後人工呼吸器管理を要する場合は発生に注意が必要である.
  • 井伊 庸弘, 戸田 省吾
    2010 年 24 巻 7 号 p. 1073-1076
    発行日: 2010/11/15
    公開日: 2011/04/27
    ジャーナル フリー
    75歳女性.1ヵ月間で急速に進行する呼吸困難を主訴に近医を受診.呼吸不全を呈していたため,当院に紹介された.胸部CTで気管分岐下に直径87mmの単房性嚢胞性腫瘤を認め,気管支原性嚢胞が疑われた.右中間気管支幹および右下葉気管支に高度の圧排と狭窄を認め,準緊急で右胸腔鏡下に嚢胞壁の部分切除術を施行した.手術後の経過は良好で,呼吸不全は速やかに改善し,術後2日目に軽快退院した.
  • 北野 健太郎, 此枝 千尋, 田中 真人
    2010 年 24 巻 7 号 p. 1077-1080
    発行日: 2010/11/15
    公開日: 2011/04/27
    ジャーナル フリー
    症例は84歳,男性.検診発見のI A期肺癌に対し右肺上葉切除,リンパ節郭清を施行した.術前に誤嚥の指摘なく,術後の反回神経麻痺もなかったが,第5病日より肺炎をきたし,嚥下造影検査でむせのない誤嚥が明らかとなった.肺炎が軽快したのちリハビリ目的に転院し,間欠的口腔食道経管栄養を開始して6日目に点滴を離脱した.運動・呼吸リハビリを続けながら嚥下訓練をすすめ,経過中肺炎が再燃することなく第226病日に自宅退院した.肺癌術後に顕在化した嚥下障害に際しても,間欠的口腔食道経管栄養が有用な栄養法の一つと考えられた.
  • 國谷 康平, 内山 美佳, 谷口 哲郎
    2010 年 24 巻 7 号 p. 1081-1085
    発行日: 2010/11/15
    公開日: 2011/04/27
    ジャーナル フリー
    症例は16歳男性,検診の胸部X線で異常陰影を指摘された.胸部CTにおいて前縦隔に径7cm大の腫瘤と左上葉に径1cm大の結節を認めたため,手術にて双方を摘出した.病理組織学的所見としては,内腔が一層の内皮細胞で覆われた大小の拡大した血管腔の集簇から構成されており,縦隔と肺に発生した海綿状血管腫と診断された.胸部領域の海綿状血管腫は稀であり,縦隔と肺の同時発生の報告は極めて稀と考えられる.
  • 樽川 智人, 金田 正徳, 安達 勝利
    2010 年 24 巻 7 号 p. 1086-1091
    発行日: 2010/11/15
    公開日: 2011/04/27
    ジャーナル フリー
    健康診断の胸部レントゲンで左上肺野に異常陰影を指摘され,胸部CT/FDG-PETで肺癌が疑われたため,当科を紹介受診し,気管支鏡で舌区気管支が下葉気管支主幹から分岐する異常を認めた.上下葉間の分葉は認められず,上区・舌区間に異常分葉を認めたため左上区切除術を施行した.病理組織検査で肺大細胞神経内分泌癌(LCNEC)と診断され,病理病期T2aN1M0,stage II Aであった.術後気管分岐部リンパ節の腫大を認めたため,化学療法を施行したが,間質性肺炎の急性増悪により術後5ヵ月目に失った.
  • 伴 秀利, 西村 嘉裕
    2010 年 24 巻 7 号 p. 1092-1097
    発行日: 2010/11/15
    公開日: 2011/04/27
    ジャーナル フリー
    症例は60歳女性.検診で胸部異常陰影を指摘された.胸部CTおよびFDG-PETを施行され,胸腺腫を疑われて紹介受診した.前医の胸部CTおよび術前に施行した胸部MRIにおける限局性非浸潤性所見と,FDG-PETにおいてSUVmax 3.4とごく軽度の集積率増加であったことから,正岡分類I期の非浸潤性胸腺腫と術前診断し手術を行った.術後病理組織検査によって胸腺原発のLow-gradeのmucoepidermoid carcinomaであり,Stage Iで完全切除されていることがわかった.術前のPET所見において既報告例と異なり軽度の集積率増加しか示さなかったのは,本症例がLow-gradeであったことが原因と推察された.胸腺原発のmucoepidermoid carcinomaは稀な疾患で,その予後は組織学的悪性度と臨床病期の各々と相関するとされており,本症例は良好な予後が期待され経過観察を行っている.
  • 花岡 淳, 川口 庸, 堀 哲雄, 北村 将司, 寺本 晃治, 手塚 則明
    2010 年 24 巻 7 号 p. 1098-1104
    発行日: 2010/11/15
    公開日: 2011/04/27
    ジャーナル フリー
    症例は71歳,男性.重症肺炎に合併した難治性有瘻性膿胸に対する加療目的で入院した.EWSによる気管支塞栓術と手術療法の併用が奏功し,胸腔ドレーン抜去後に退院した.術後5ヵ月後の胸部CTでは胸水の貯留と吸引性肺炎が認められ,塞栓に用いたEWSの胸腔内への逸脱が確認された.胸腔ドレナージにより吸引性肺炎が改善した後に開窓術を施行,現在,通院でガーゼ交換中である.EWSによる気管支塞栓術は難治性有瘻性膿胸症例に対して有用であった.しかし,感染気管支への使用や抜去のタイミング等について今後のさらなる検討が必要と考えられた.
Letter to the Editor
  • 高尾 仁二, 新保 秀人
    2010 年 24 巻 7 号 p. 1105
    発行日: 2010/11/15
    公開日: 2011/04/27
    ジャーナル フリー
    本誌2010年1月号で三澤ら1)は,経胸壁超音波検査による自然気胸の重症度判定について検討し,胸部X線写真で虚脱率16.5%以上の気胸患者20例全例で超音波診断が可能であったと報告した.しかし,軽微な気胸や胸部X線で指摘できない気胸の診断の可能性に関しては推論の域を出ていなかったため,その後にChestに掲載されたGalboisらの論文2)を紹介しておきたい.著者らは,胸腔ドレナージを必要とした44例の気胸患者の治療中に162回の胸部X線写真+超音波検査を施行し,結果が不一致であった場合に胸腔穿刺或いはCTで気胸の有無を確認する前向き試験を行った.34回の超音波検査で気胸が疑われ(胸部X線写真で気胸を指摘された20回は全て超音波検査でも陽性),胸部X線写真陰性の14例中13例で気胸が確認された.両検査が陰性の場合には診断確定を実施していないので,超音波検査の感度及び陽性的中率は算出し得ないが,胸部X線写真では少なくとも13/33例(39%)で僅少な気胸を見逃している.三澤論文では胸部X線写真を気胸診断のGold standardとしているので,気胸診断における超音波検査の意義は評価できないが,気胸の重症度を推定しうる事を示した点は評価に値する.Galbois論文では皮下気腫が著明な例や人工呼吸器装着例は検討対象外であること,巨大嚢胞で擬陽性となるなど,その解釈に一定の注意が必要である.気胸診断におけるCTの優位性は論を待たないが,これら両論文の知見を念頭に超音波検査の積極的利用をすすめたい.
おことわり
  • 松谷 哲行, 藤枝 俊宣, 木下 学, 尾関 雄一, 武岡 真司
    2010 年 24 巻 7 号 p. R1
    発行日: 2010年
    公開日: 2011/08/30
    ジャーナル フリー
     「松谷 哲行 肺瘻修復における超薄膜状ナノバイオマテリアルの臨床応用へ向けた基礎的検討 日本呼吸器外科学会雑誌24巻1号」と英文誌「Toshinori Fujie. Adhesive, flexible, and robust polysaccharide nanosheets integrated for tissue-defect repair. WILEY Inter Science Adv. Funct Mater,2009,19,2560-2568.」が,言語が違い,領域も違いますが,著者がほぼ共通し,実験内容,結果がほぼ同じであり,図もほぼ同じものがあり,かつ,当該論文が引用されていないという指摘がありました.そのことについて編集委員会で確認致しました.ここに掲載したことを,深くお詫び申し上げます.
     児玉前編集委員長の時から,二重投稿については日本呼吸器外科学会のサイトの“学会誌について”で「言語を問わず,既報の論文を故意に引用していない場合は二重投稿とみなされる」と明記されています.
     今後,日本呼吸器外科学会ではこのような2次出版も重要なカテゴリーになると考えます.もちろん,査読に関して「論文が異なる読者層を対象にしていること」が重要なものと考えられます.このような論文の投稿に当たっては,「初出文献を記載すること」,「最初に報告された研究に基づくものであることを脚注などで示すこと」を徹底して頂きたいと存じます.
    日本呼吸器外科学会雑誌 編集委員長
    大 貫 恭 正
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