抄録
症例は57歳の男性.2008年12月胸部圧迫感を主訴に近医受診し,前縦隔から右胸腔内に巨大な腫瘍を指摘された.画像所見より縦隔原発の脂肪腫もしくは高分化型脂肪肉腫が疑われたため,胸骨正中切開で腫瘍摘出術を施行した.腫瘍の大きさは36×20×13cmで,重量は2,900gであった.術後病理検査では高分化型脂肪肉腫と診断された.周囲組織を含めた完全切除を行い得たので,術後補助療法は施行せず,術後2年8ヵ月経過した現在も再発なく経過観察中である.縦隔脂肪肉腫は希な疾患であり,発見時には巨大な腫瘍として発見されることが多い.高分化型は予後良好であり完全切除によって良好な予後が期待できるが,局所再発例も多く,慎重な経過観察が必要である.