2012 年 26 巻 1 号 p. 060-063
症例は68歳男性.咳,血痰を主訴に近医を受診した.胸部CTで右肺尖部から肺門部にかけての腫瘤を認めた.気管支鏡検査にて放線菌が疑れたため,抗生剤治療を開始した.自覚症状は改善したが,腫瘤の縮小を認めなかったため,肺癌の合併を疑い,診断と治療を兼ねた手術を行った.術式は胸腔鏡補助下右肺上葉切除術とリンパ節郭清(術中迅速病理診断carcinoid).術後診断はadenocarcinoma, p-T3N1M0 stage IIIA.摘出標本からは放線菌は認めなかった.今回,我々は肺放線菌症に肺腺癌を合併した比較的稀な症例を経験したので若干の文献的考察を加えて報告する.