2012 年 26 巻 1 号 p. 064-068
症例は81歳,女性,C型肝炎,肝硬変で治療中の2010年3月頃より,右胸水が出現し,外来にて定期的に穿刺吸引を行っていた.その後,胸水貯留の頻度が多くなり,呼吸困難がしばしば出現したため,当院紹介となった.入院後,胸腔ドレナージ,胸膜癒着療法を行ったが,胸水のコントロールが困難なため胸腔鏡下手術を施行した.鏡視下に横隔膜の小孔を探したが発見できなかったため,吸収性ポリグリコール酸フェルト(PGA felt)を横隔膜全体に被覆した.術後2週間で胸水の貯留は消失し,その後も胸水の貯留はみられなかった.横隔膜上の小孔を発見できない場合でも,横隔膜全体と肺底面が十分に癒着すれば,小孔は閉鎖されるものと思われた.難治性肝性胸水の治療には様々な報告がみられるが,鏡視下における癒着療法として考えると,簡便かつ有用な方法と思われた.