日本呼吸器外科学会雑誌
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症例
肺癌手術時に徐脈,心停止を来した3例
渡 正伸松浦 陽介
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2012 年 26 巻 1 号 p. 094-098

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抄録

肺癌手術では心臓近傍の操作により循環器系への負荷を強いることもあり注意が必要である.今回我々は手術中に徐脈,心停止を来した肺癌3症例を経験した.いずれの症例も左肺癌症例で,左肺門部の操作中に突然の徐脈が出現した.即座の用手的心臓マッサージと麻酔科医の判断による循環作動薬の投与で心拍は再開し,手術が完遂できた.
徐脈の原因として,肺門部胸膜への刺激が心臓—迷走神経反射を誘発したためと推察するが因果関係は判然としていない.呼吸外科分野では胸腔鏡下手術が広く普及しているが,術中にこのような徐脈や心停止が生じた場合,創からすぐに手が入らず,用手的心臓マッサージが遅れ,重大な事態を招く可能性も危惧される.
今後,術中徐脈の発生機序を解明し,予防策や対処方法等を論じる上で,極めて興味深い3症例と考えられたため報告する.

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