抄録
症例は80歳女性で,主訴は呼吸困難.肝細胞癌に対して,ラジオ波焼灼術(RFA)や肝動脈塞栓術を当院で繰り返している.CTで右胸水貯留と,横隔膜欠損部を通しての右胸腔内への腸管脱出を指摘された.腹壁に門脈圧亢進に伴う怒張血管を認め,かつ肝の委縮は高度であった.イレウス症状は認めなかった.RFA後の横隔膜ヘルニアが疑われ,手術を行う方針となった.過去のMRIを検討すると,肝S6病変に対するRFA時に横隔膜に熱損傷が加わり,その部位が断裂しヘルニアを発症したと考えられた.上腹部手術操作や腹壁の怒張血管損傷による肝不全のリスクを考慮し,胸腔鏡下手術(VATS)を行い修復することとした.結腸や大網を腹腔内に環納し,3 cm大の横隔膜欠損部は直接縫合で修復した.VATSは本手術の有用なアプローチの1つと考えられた.