2015 年 29 巻 1 号 p. 89-94
症例は52歳,女性.前医で2001年6月に直腸癌および同時性肝転移に対して低位前方切除と肝部分切除術を施行され,術後骨盤内再発で2004年9月に腹会陰式直腸切断術が行われた.2008年のCTで左肺上葉の肺動脈(A1+2c)に一致する陰影を指摘されたが,積極的に悪性病変は疑わず経過観察となった.その後陰影は徐々に増大し,2013年4月のCTでは肺動脈内に留まるも,長径は約4.5 cmに増大していたため,当科にコンサルトされた.PET-CTを施行したところ陰影に異常集積(SUV max 17.1)を認めたため,悪性病変を疑い2013年6月左上葉切除術を施行した.摘出標本の病理検査で直腸癌の肺転移と診断された.腫瘍組織はほぼ全て肺動脈血管内に存在し,血管壁構造の破壊はわずかしか認めなかった.稀な形態を示した大腸癌肺転移症例を経験したので報告した.