2015 年 29 巻 4 号 p. 531-535
気管支原性嚢胞の多くは中縦隔に発生し,前縦隔の胸腺内に発生することは極めて稀である.我々は胸腺内に発生した気管支原性嚢胞の1例を経験したので報告する.症例は53歳女性.検診目的に撮影された胸部CT検査で前縦隔に2 cm大の腫瘍を指摘され,当院を受診した.画像所見では胸腺内に2 cm大の嚢胞性病変を認めたが,嚢胞液が粘調な成分であったため,胸腺嚢胞よりは気管支原性嚢胞が疑われ,胸腔鏡下胸腺摘出術を施行した.組織学的検査の結果,嚢胞の内腔を被覆する上皮が線毛円柱上皮であったため,気管支原性嚢胞と診断した.前縦隔の嚢胞性腫瘤においては,稀ではあるが気管支原性嚢胞も鑑別にあげる必要があると考えられた.