抄録
症例は70代男性.直腸癌,両側転移性肺腫瘍術後経過観察中,右転移性肺腫瘍を疑う結節影が出現し,手術を行った.開胸創を中心に再手術による広範な癒着を認めた.腫瘍摘出後に,剥離の際に生じた気瘻に対し,タコシール®を使用した.貼付約20分後に血圧低下を認めた.エフェドリン,フェニレフリンの効果に乏しく顔面および四肢紅潮を伴い,タコシール®によるアナフィラキシーと判断した.直ちに除去し温生食で洗浄すると,約5分後に血圧は回復した.タコシール®によるアナフィラキシーショックをきたした極めて稀な1例を経験したので報告する.